…!
…また、夢か。
浅い眠り。すぐに目が覚める。
背中が気持ち悪い。
汗でびっしょりだ。
熱のせいなのか夢のせいなのか…
バラバラになった家族。
誰もいない食卓。
助けてくれ!
一生懸命に伸ばす手。
だけど掴んでもらえない。
みんなが見ないふり。
誰も助けてくれない。
…せめて夢ぐらいは幸せな夢見させてほしい。
だけど
どれだけ強がっても私は一人では生きれない。
何もできない身体。
今、手を離されるとそのまま倒れてしまう。
弱い身体。
でも、ふと思う。
こんな身体になる前でも私は一人で生きていたわけじゃない。
食べるものだって誰かが作ったもの。
会社にいくにも電車かバスをつかってる。
着る服だって住んでるマンションだって誰かが…
何より一人で大きくなったわけじゃない。
親が育ててくれた。
生きてる事自体が誰かが支えてくれてるということ。
何より一人ぼっちだと淋しくて耐えれないだろうな。
いつか、誰かの差し出した手を掴んであげれる人間になりたい。
天井の写真を見つめながらそう思った。
《プシュープシュー》
「はい、お口を開けてくださいね。」
そう言って自分の口も、あーんと開ける。
言語療法士さん。
名前からだと喋るためのリハビリの先生かと思っていた。
だけど、食事を食べるための訓練や口の中のケアなんかもしてくれる。
「お口の中は、ばい菌でいっぱいなんですよ。きれいにしないと病気が悪くなっちゃいますからね。」
棒の先端にスポンジが付いたものを使ってブラッシングしてくれた。
先端に白い固まりが付着している。
「痰の固まりがくっ付いてたり、舌に苔がはえてしまうこともあるんです。お口の中のケアは食べなくてもしてくださいね。」
なんか入院して初めて知る事ばかりだ。
私はまた、喋ったり食べたりできるようになるのかな?
お腹が空いたよ。
…痛っ
あれ?胸の真ん中あたりがチクチクする。
気のせいかな?
さあ、次は身体のリハビリだ。
早く歩きたい。
早く退院したい。
「起きるのは、まだ早いですよ。焦らないで下さい。」
大丈夫だよ、コレくらい。
焦るな?
そんなの無理に決まってるだろ。
早く元気になって早く仕事に戻らないとクビになってしまうよ。
やる事もやりたい事もたくさんある。
今のままじゃ生活もできなくなる。
1日でも早く
1秒でも早く
元気になりたいに決まってるじゃないか!
大丈夫。
コレくらい大丈夫。
「今、焦って無理すると負担がかかって逆に悪くなりますよ!」
…
理学療法士さんの表情が険しくなる。
本気で怒っている。
「適度に休む事もリハビリなんですよ。頑張るのと無理するのは違います。」
はい。
…わかりましたから睨まないでください。
ごめんなさい。
身体を休める事も大切か。
気をつけよう…
午後になり休憩。
横になって身体を休める。
「検温します。」
看護師さんが体温計を脇にはさむ。
《ピピピピ…》
また38度。
午前中は少し熱が下がるのに昼過ぎるとまた、上がってくる。
ずっと熱が下がらないから身体がダルい。
時々、胸がドキドキするし体調が悪い。
相変わらず呼吸器も外せず、息もなかなか楽にはならない。
…
手足はリハビリで筋肉痛。
元気になるのって難しいんだ。
早く元気になりたい。
しゃべりたいし歩きたい。
私は贅沢なのかな?
みんなが普通にしてる事がただ、したいだけなのに…
普通の生活に戻りたいだけなのに…