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〃脳外科⑦〃




カタン…


原井さんは数口食べるとスプーンを置いてしまった。


「もう少しだけ食べませんか?」



私の言葉に原井さんは表情を変えないまま、首を少し左右に振った。




「拭きますね。」



口の周りの汚れを拭き歯磨きの準備をする。



麻痺のある側は口の中に食べ物が残っていても気付きにくい。

でも食べ物が残ってしまってると、肺炎の原因になってしまう。


だからお食事のあとは口腔ケアが大切。




「…」



口をゆすぐ時も麻痺してる方から水が溢れてしまう。



原井さんはまた、横を向いて外を眺めてた。






食後、一息ついて言語療法士さんによる発声の訓練。




「あ、あ、あ、あ、あ。」

言語療法士さんが、口を大きく動かしてみせる。



「あ…う…」




唇が上手く動かせない。



バンッ!




原井さんが思わず左手で布団を叩いた。




「…」



すぐに我にかえって頭を下げる。



歯痒いんだよね…

当たり前に出来てた事が出来なくなること。




辛くないはずがない。

すぐに受け入れれるはずがないよ…

 




「…あの、すいません。」

思い付いたことがあって、看護師さんやリハビリの先生に相談してみた。




実習が終わり、100円ショップで材料を買い込んだ。

家に帰り、プラスチック板に五十音を書く。


それとは別に簡単な単語も書き込む。



『はい』

『いいえ』

『痛い』

『起きたい』

『トイレ』




病院にも文字板はあるけど、原井さんに何かをしたかった。


原井さん専用の文字板。

単語も原井さんが必要な単語を考えた。


文字だけだと味気ないのでイラストも書いて…


今の私が原井さんにできることは限られてた。


…でも、この文字板使ってくれるかな?



不安だ。




「ふぁああぁ…」



眠たい…

だけど、まだ実習記録予習もあるんだっけ。


あうぅぅう~…

今日は徹夜になっちゃうなぁ…







翌日も実習。


目がショボショボする…


身体がだるいよぉ。



パンッ!



「よしっ!!」


両頬を叩いて気合いをいれた。



「おはようございます。」


原井さんの病室に入り、精一杯明るく挨拶をした。

 

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