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〃脳外科⑤〃



「師長さん、すいませんでしたっ。」


私は原井さんの甥の方からお叱りをうけた。



『よいしょって何だ。患者をモノみたいに扱って。』


そんなつもりはない。
無意識に出た言葉だ。



だけど家族からしたら不愉快だったのだろう。



私は甥の方の注意に思わず泣いてしまってた。

情けない。
泣きたくなんてなかったのに…


力が必要なときは1、2、3と掛け声を使う事に決まってた。

それは、今回みたいに不愉快に思われる事があるからだった…




「吉岡さん、受け持ち違う人に代える?」



「…」



師長さんの言葉が重たかった。


私には原井さんは無理なのかな…

 




患者様と医療従事者。
人と人。


どうしても合わない事だってある。

それが患者様と医療従事者ではなく、家族と医療従事者というトラブルも珍しくない。



信頼関係の積み重ねが大切な医療の現場で、不信感があると治療や検査もスムーズに行いにくくなるんだ。


そんな時は担当を変えることも当然考える。



だけど…


私は、まだ原井さんに何もしてあげれてない…




「すいません。もう少しだけ頑張ってみます。お願いします。」



私は逃げたくない!


 





「無神経な言葉を言って本当に申し訳ありませんでした。」


私は原井さんと原井さんの甥に頭を下げた。


だけど甥は表情も変えず私を無視する。




…うぅ、腹が立つよぉ。




「あ゛ぁあああぁ!」



また水木さんが叫ぶ。



「ちっ。」



男性は椅子から立ち上がり、廊下歩いてた看護師を呼び止める。



「なあ、朝から晩までうるさいんだよ。こっちも病気で入院してるのに休めないだろ。あれ、何とかしろよなっ!」


怒り口調で水木さんを指差した。

大きい声のため、その言葉が耳に入り水木さんの奥さんが平謝りする。


「本当にごめんなさい…悪気はないんですが。」



「ふん。」



男性は、言うだけ言った後は再び椅子に座り携帯電話を触りはじめた。



「すいません、主治医に相談しますからお待ちください。」


看護師さんは頭を下げナースステーションに戻った。



…ひどい。

だけど、間違ったことを言っているわけではない。


水木さんの叫び声に皆が辛い顔をしてたのも事実だった。


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