∞生と死の間∞ /2/1(木)日勤
「検温行ってきます。」
先輩に声をかけてカートに体温計、血圧計、聴診器に点滴を乗せてナースステーションを出た。
「お変わりないですか?」
声かけしながら患者様のバイタル、顔色、ご飯の量、点滴の量や速度など確認していく。
うぅぅ。
朝から忙しくて目が回りそうだよ。
ナースコールが鳴りっぱなし…
思わず心の中で愚痴っていた。
「中谷さん、血圧測りますね。」
中谷さんは眠っている様子で返事が返ってこない。
お昼ご飯の後、よくお昼寝している事が多いお爺ちゃんだった。
《ピーー》
電子血圧計がエラーを表示する。
「すいません、もう一度測りますね。」
再度ボタンを押し、触診しようと手首に触れた。
…
ん?
…
脈が触れない…
一瞬何が起きたのか把握ができなかった。
そっと首の脈に触れる。
血圧が測れないときの簡単な測定方法。
脈拍の触れるところで血圧判断できる。
目安は首だとだいたい60以上はある、 大腿はだいたい70以上。
だけど首のゆっくり脈拍も私の指先に感じることができず…
「中谷さ…」
呼吸…してない…
…
え?
さっきまで普通にお話してたのに…何?
…
状況把握するまでに一瞬頭が真っ白になっていた。
あ。
ナ…ナース
ナースコール…
震える手でコールを探りボタンを押した。
『どうされました?』
先輩の声。
「あ…あの…中谷さん、息してないんです…。」
『ガチャン』
コールは直ぐに切れた。
と、とりあえず気道確保…
手の震えが治まらない。
落ち着け私!
中谷さんの額に手をあてる。
まだ温かい…
そのまま額を押し、もう片方の手で顎を持ち上げる。
《ガラガラガラ…バタン》
二人の先輩看護師が病室に飛びこんてきた。
「家族と先生には連絡したからね。」
持ってきた救急カートから酸素の流量計とアンビューマスクを取りだし取り付ける。
もう一人の先輩は心電図モニターを胸に貼っていく。
動きに迷いも無駄もなかった。
私は何をしていいかわからず戸惑い立ち尽くした。
「吉岡、心マっ!」
先輩はアンビューマスクを装着させ人工呼吸を開始していた。
モニターの画面に表示されているのは一本の平坦な線だった。
!!
先輩の声に慌てて身体を動かした。
えっと…胸骨に片手をのせて上からもう片手を重ねる…
肘を真っ直ぐに体重をかけ5㎝へこむぐらいの力で…
確か1分に100回!
とにかく無我夢中で胸を圧迫し続けた。
私が胸を圧迫するタイミングでモニターの波形が反応する。
横で先輩が点滴のルートを取る。
はぁっ!
はぁっ!
息が切れる。
心臓マッサージは体力をかなり消耗する。
汗が吹き出す。
《バキッ》
骨の折れる音…
手に感触が伝わる。
でもマッサージを止めるわけにはいかない。
「中谷さんっ!中谷さんっ!頑張って!!」
お願い!心臓動いてっ!
お願いっ!!!
《ピーーーーーー…》