働く看護師皆さんのための13サイト☆現在準備中

3月11日日曜日(晴れ)

 

「小林さん。」

 

 

 

 

 

「小林さん。」

 

 

 

 

ボーっとしてた。

 

目の前に優花ちゃんが立っていた。
肩で息をしている。

だけど、顔は笑っていた。こんな笑顔は初めて見た。

 

すごく嬉しそう。
何かいい事あったのかな?

 

 

[どうし、たの?]

 

 

こちらも笑顔になる。
相手がニコニコしてると不思議と、こっちも嬉しくなる。

気持ちって伝染するものなのかな?

 

 

「えへへ。」

目をキラキラさせていた。
だけど何も言わず子供っぽく笑った。

私は首を傾げ、陽子と顔を見合わせた。

 

 

どうしたんだろう?
何があったんだろ?

優花ちゃんは一度、大きく息を吸うとゆっくり口を開いた。

 

 

「…明日、車椅子に座るってリハビリの先生が言ってましたよ。」

なーんだ、車椅子か…

何があったのかと思…

 

 

…ん?

横を向くと、陽子は驚いた顔から笑顔へと変わった。

 

 

…え?

まって。車椅子って言ったのか?

つまりベットから離れられるって事?
もしかして、この部屋から出れるの?

 

 

1ヶ月以上、ずっと閉じ込められてた。
この壁に囲まれた同じ風景からやっと解放されるの?

 

 

[ホント、に?]

「はい、リハビリの先生が佐々岡先生に相談してたんですよ。」

ニコニコと笑顔で答えてくれた。
優花ちゃんはまるで、自分の事みたいに喜んでくれている。

陽子にいたっては涙がこぼれていた。

 

 

有難う…

解放される喜びはあった。

 

 

だけど、それとは別に私の事で一緒に喜んだり、泣いたりしてくれてる人が傍にいる事。

すごく嬉しかったんだ。

私は一人じゃなかった。

 

 

 

そっか…

よかった…

ずっとずっと…
もしかして永遠につづくとさえ思っていたベッド上での生活。

ようやく外の世界へいけるんだ…

 

 

 

鎖につながれた犬。
籠の中の鳥。
檻の中の虎。
その苦しみがわかる。

私は病室という四角い檻の中、呼吸器という鎖につながれ動けずに過ごした。

 

 

病気という名前の悪魔のせいで。

それが、どれだけの拷問だったか…

自分の足が動かない事がどれだけ辛い事か。

苦しくて
悲しくて
悔しくて

 

 

 

やっと…

 

痛っ!
みぞおちの辺りがいたい。

 

 

 

ふぅ…

明日か…

子供の時の遠足みたいにドキドキする。

今夜、眠れるかな?

 

 

 

次へ

前へ