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3月10日土曜日(曇り時々雨)

「では、始めましょう。」

ベッドサイドに看護師さんと先生が立つ。

 

 

先生が手袋を着ける。

どきどき…

緊張する。

 

 

「では、吸引とガーゼ準備してください。」

「はい。」

 

 

先生の声に看護師さんが吸引器のスイッチを入れた。

 

《シュー》

「新しいカニューレと注射器、あと消毒も。」

「はい。」

 

 

並べていたモノを手際よく渡す。

冷たい。

喉のところを消毒する。

 

「ゼリーを。」

「どうぞ。」

先生がヌルヌルしたものを新しい管の先端に塗りつけた。

 

 

「さあ。小林さん、いきますよ。」

え?

注射器で空気を抜く。
一気に管を抜く。
そして、そのまま新しい管を喉の穴に突っ込む。

痛い。
喉に痛みが走る。

 

 

終わりましたよ。」

あれ?もう終わり?

 

 

「お疲れ様でした。」

有り難うございました。

 

 

管の交換は毎週しないといけないらしく、知らないうちに前も交換していたらしい。

「管が抜けないようにヒモで結んでおきますね。」

 

はい。
お願いします。

やれやれ、無事に終わったよ。

ふぅー。

 

 

「あ。」

何?
陽子が驚いた顔している。

 

ナースコールを押した。

 

 

《どうしました?》

「看護師さん、主人の管を変えたところ出血してるんですが大丈夫ですか?」

 

 

血?
血が出てるの?

しばらくして看護師さんが部屋へ来た。

 

 

「大丈夫ですよ。今日はしばらく出血あるかもしれませんが、出なくなりますからね。」

そう言うと、新しいガーゼを準備してくれた。

 

「ガーゼだけ交換しておきます。」

よかった。
大丈夫なんだ。

 

 

一つ一つの事に不安になるから説明してくれると安心する。

だけど…

 

 

まだ、管は抜けれないのかな?

喉の穴を塞ぐ事はできないのかな?

…いつまで病人なんだ?

 

気はいつ治るの?
本当に治るの?

いつになったら喋れるようになるの?

結局、不安で不安で仕方ない。

 

「あなた、少して出くるわね。」

[うん]

 

 

ナースコールを手に届くところに置いてくれた。

「じゃあ。」

陽子は手を振ると病室から出ていった。

 

 

静かだ。

 

 

《カチ》

『…その時に…』

 

 

テレビのスイッチを入れるがつけておくだけ。
見る気にはならない。

 

 

身体がしんどいと何もかも面倒くさい。

最近、陽子が不在の時間が増えてきた。

 

 

家の事、綾の事もあるし、私の洗濯物なんかも持って帰って干している。

忙しい思いさせているから仕方ない。

病気が多少落ち着いてきているってことだ。

そう信じていいんだよな。

 

 

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