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3月 9日金曜日(晴れ)

《シュー…カタン》

ふぅ。
スッキリした。

 

「あなた、どう?痛くなかった?」

また、痰が貯まって胸が痛かった。

 

だけど、陽子がいる時はもう看護師さんを待たなくてもいいんだ。

陽子に吸引してもらえる。

 

 

[ありが、とう]

最初のうちは看護師さんに教えてもらいながら、恐る恐るの吸引だった。

それでも、私が楽になるようにと、一生懸命に練習してくれただ。

 

 

「いえ、いえ。」

汗びっしょりになった私の体を拭きながら、笑顔をみせてくれた。

…家事も育児も一人で大変なのにに、文句一つ言わず私を支えてくれている。

愚痴の一つぐらい言いたいだろうに。

 

 

私の病気が陽子に沢山の負担を与えてしまった。

もし私が陽子の立場になったら、同じようにできる自信がない…

 

 

優しい表情で見守ってくれている。
だけど、疲れた顔。

きっと身体もクタクタに疲れてるんだような。

 

 

ゴメンな。

本当にゴメン。

 

《ゴォーゴォー…》

 

!?

何?この音。
すごい近くから聞こえてくる。

目を開けると陽子が目を真ん丸にして私の顔を覗きこんでいた。

《ゴォーゴォー…》

 

 

陽子、どうした?
何かあったのか?

 

「あなた、寝てるの?」

不思議そうに陽子が首を傾げる。

 

 

[おき、てるよ]

いったい何を言ってるんだろ?

 

 

《ゴォーゴォー…》

 

 

「だって起きてるのに、イビキかいてるみたいだから…』

え?この音、私からだったのか?

 

 

《ゴォーゴォー…》

何かまた病気?
少し息はしんどいけど。

大変だ、どうしよう…

 

 

「私が何かしちゃったのかな?」

陽子が不安そうな顔している。

 

 

「変な音がするんです。大丈夫でしょうか?」

陽子が慌てて看護師さんを呼んでくれた。

 

 

看護師さんが私の頭へ耳を近づけ確認する。

《ゴォーゴォー》

やっぱり変な音が鳴る…
この音は何なんだ?

 

 

看護師さんが顔をあげて微笑んだ。

「カフもれしてますね。大丈夫ですよ。」

カフもれ?
何?

 

 

看護師さんは手に注射器を持った。

「喉の管は袋を膨らませて固定してるんです。」

紐で固定してるだけじゃないんだ。

 

 

「風船から少しづつ空気が漏れるとしぼんで、隙間から音がなるんです。」

へぇー。
空気が漏れてた音なんだ。

 

護師さんが管につながってるチューブと注射器を接続した。

 

「今から空気を少し入れますね。」

 

あ、音が止まった。

 

 

「そういえば、そろそろ管を交換しないといけないですね。明日変えましょうか。」

え?交換するの?

 

痛い?
危険じゃない?

うぅ、不安だ。

 

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