へぇ~…
《プシュー…》
「あなた、どう?」
「パパ、どう?」
まったく同じ仕草で二人が聞いてきた。
革の匂いが病室に広がる。
綾が目をキラキラさせながら見つめてきた。
嬉しくてたまらないって感じだ。
「じゃーん♪」
綾がぴょんと跳ねて後ろを向いた。
その背中に背負ってたのは真っ赤なランドセル。
小さな身体に、少し大きめの真新しいランドセルはピカピカしていた。
教科書入れたら、きちんと歩けるのか心配になる。
「ジィジが買ってくれたんだよ♪」
綾も4月から小学生。
月日が経ってカラフルになったけど今も昔も同じ姿のランドセル。
子供が生まれて一年一年が早く過ぎていく。
あっという間に私も30代に突入してしまった。
…ちぇっ
綾に選んでもらった新しいスーツとビデオカメラ。
入学式のために、冬のボーナスで無理して買ったんだよ。
大事にしまってある。
今のままじゃ無駄になってしまう。
何とか行きたい。何としてでも行きたい。
今は、まだ横になっている時間が多い。
だから余計に焦りばかり出てしまう。
何とかしたい
何とかしたい
何とかしたい
何とかしたい
4月には結婚記念日もあるんだよ。
みんなに同じように時間を与えられるわけじゃない。
みんなが同じ年齢まで生きれるわけじゃない。
今、すごく実感してる事。
時間の存在。
あれから熱は落ち着いたけど胸はやっぱりしんどい…
熱のせいもあると思ってたけど違うのかな?
胸の真ん中辺りもよく痛くなるし。
ドキドキして胸が落ち着かない。
いろいろと不安が強いのかな。
ストレスが溜まってるのかな。
お尻も痛いし。
じっと寝てるだけでも辛いんだよ。
重病人みたいだね。
身体が楽な日がないよ。
息がしんどい
咳き込むと胸が痛い
身体が怠い
結局、眠ってる時が一番楽なんだ。
いろんな事が忘れられる。
今日も眠り薬お願いしようか。
いい夢が見れますように…