そして、精神科ならではなのが入院形態。
殆どが医療保護入院と記されている。
入院には任意入院、医療保護入院、措置入院とある。
みんな自分が精神病だなんて納得し入院することは無くて、精神保健指定医により本人の意思とは別に入院となる事が多い。
だから病院から脱走しないために、至るところに鍵がかかってて、看護師さんが管理してるわけ。
「アナタ、イクツですカ?」
「あ、19歳です。」
私は陽気な声に反射的に答えた。
「まあ、若いわねぇ。」
横から別の女性が、声かけてくる。
目の前に積まれた沢山のプラスチックの部品。
それを組み合わせお花を作る。
私は患者様と並んで座って、造花作業をしてたんだ。
「早いですね。」
みんな慣れた手つきで次々と出来上がっていく。
「毎日やってれば嫌でもできるようになるわよ。」
ケラケラ笑いながら答えてくれた。
「アナタ、カレシはいるノ?」
私の肩を突っつきながら、話してくれたのはラーシャさん。
厚い化粧に香水がキツいのが特徴的なフィリピンの女の人。34歳。
ご主人が日本人で歳がすごく離れてる。
その隣は宮川さん。
40代の女性。
私は抵抗なく会話ができてた。
患者様によってはキャッチボールをしてたり、映画鑑賞をしたり、卓球をしてる人だっていた。
だけど、みんな遊んでいるわけじゃなくて、これは治療の一つだったりする。
リハビリテーション。
精神病の治療は3つの治療から成り立ってる。
薬物療法。
精神療法。
リハビリテーション。
精神科でのリハビリテーションとは、精神へのリハビリ。
「社会復帰」
それがゴールであり退院ということ。
精神病という生きづらい病状に対し、実社会で生活していくための訓練。
スポーツだったり、レクリエーション活動だったり、手工芸の作業だったり…
それぞれが、治療という意味のあるものなんだ。
造花の内容には患者様に合わせて簡単なものから難しいものがあるんだ。
看護師さんも隣に座って、お話ししながら一緒に作ってる。
造花作業はきちんとしたお仕事だ。
仕事の量に応じてお金としてきちんと患者様に支払われる。
「もうすぐ海だねぇ。」
「うん、楽シミね。」
二人の会話に驚いた。
「海水浴もあるんデスか?」
この他に皆でゲームをしたり、映画をみたり、楽器をつかって歌ったり、
年間行事として花見や海水浴、遠足なんかもある事にはびっくりした。
まるで学校みたい。
「学生さん、ちなみに今日の午後はカラオケ大会だから何か歌ってね。」
作業療法士さんの言葉に固まってしまった…
う…歌ですか?
まぢで?