「今日はMRIの検査があるので、学生さん一緒に行きましょうか。」
看護師さんがストレッチャーを押しながら声をかけてくれた。
原井さんの梗塞が広がってないか確認の検査。
「はいっ。」
私は看護師さんの後に続いた。
やったぁ。検査、検査♪
「ああああぁおあー。」
!!
相変わらず病棟には叫び声が響いていた。
水木さん…何を叫んでるんだろ。
もしかしたら、今の自分の状態が歯痒くて仕方ないのかな。
私は勝手な想像を膨らませながら、叫び声のする病室の前で足を止めた。
「失礼します。」
あれ?
原井さんのベッドの横に男性が座ってる。
中年の男性で作業服を着ていた。
忙しそうに携帯電話を触っている。
「原井さん、今から検査に行きますね。」
看護師さんが声をかけると、原井さんが頷いてくれた。
「あんた、誰?」
男性はこちらを見ないで視線は携帯電話のまま、ぶっきらぼうに声をかけてきた。
「あ、すいません。看護学生の吉岡です。原井様を受け持たしていただきます。」
私は慌てて頭を下げた。
馬鹿だ。
肝心な挨拶を忘れてた。
「ふーん…叔父はあんたのお勉強のための道具になるんだ。」
男性は、視線は合わさないまま言葉を続けた。
「そんな…」
「あああ”ぁあっ!」
私の言葉を水木さんが遮った。
横に奥さんの姿は見えなくて独りで叫んでた。
「うるせぇな。」
男性が舌打ちする。
この人、何なの?
何でこんなに威圧的なの?
「今から検査に行きますからストレッチャーに移りますよ。」
原井さんのベッドの横に担架を並べる。
看護師さんが担架側から原井さんの下に敷いたタオルを掴む。
私はベッド側からタオルを掴んだ。
二人で原井さんの身体を持ち上げ担架に移す。
「1、2の3。」
「よいしょっ!」
うぅ、重たいよぉ…
あれ?看護師さんが困った顔している。
「学生さん…」
「おい、あんたっ!」
看護師さんより先に男性が声をあらげる。
私を睨んでた。