河田 チエ子さん。
84歳。
既往歴 高血圧。
介護保険 未申請。
子供4人 現在、長男夫婦とその孫二人と5人暮らし
主人は5年前に他界している。
軽い認知症があり元々介護が多少必要だった。
キーパーソンは息子嫁。
挨拶した時に横にいた女性はお嫁さんだった。
「痛い痛い痛い痛い!!」
身体を動かすと骨折した所が強く痛むためトイレで便器を差し込むだけでも大変だった。
眉間にシワを寄せて泣きそうな顔になる。
「私はこんな目に合わないといけないような酷い事したんかな…」
ご飯も身体をあまり起こせないため、横になったままオニギリを食べる。
だけど痛みが気になってか食事は進まない。
「優花ちゃん、ごめんなさい。もう下げて…」
河田さんは、足の痛みと手術への不安ですっかり落ち込んでしまっていたんだ…
「看護婦さんに痛み止出してもらいますね…」
河田さんはベッドの上で動けないから気分転換もできない。
私は何もできない…
何て無力なんだろ…
学生なりに出来る事を精一杯考えてみたけどね…ただ、傍にいてあげる事しかできなかったんだ。
そして手術の日がやってきた。
だけど私は学校にいた。
実習でも毎日、病院に行くわけではなく。
学校で授業を受ける日も曜日で決まっていた。
「うーん…何をしたらいいのかな?」
手術後だから基本は痛みの管理だよね。
…あとは、合併症の予防と、リハビリと…
うううぅ
頭つかう事は苦手だよぉ。
看護計画とか記録とかなければいいのに。
「ふぅ、ふぅ。」
やっぱり病棟まで遠いな。
実習中立ちっぱなしでパンパンになってる足に階段は辛いよぉ。
私は学校終わった後、河田さんが気になり、制服のまま病院へやってきた。
長い階段を上がり終わり、やっと病室にたどり着いた。
ふー…
大きく深呼吸をして、乱れた呼吸を整えた。
「河田さん。」
ひょこっと病室を覗きこんだ。