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〃整形外科①〃

∞整形外科∞

「ふぅ、ふぅ…」

 

うぅ…
遠いよぉ。

私は階段を駆け上がっていた。
整形病棟は6階

 

学生だからエレベーターを使わないように階段を使うんだけど…

 

 

遠い病棟は勘弁してよぉ。

足がダルい。

ただでさえ実施中は立ちっぱなしで足がパンパンになるのにぃ…

私の受け持ち患者さんは、どんな人かな?

話しやすい人だったらいいのにな。

 

 

うぅー…不安だよぉ。




受け持ち患者。



通常は一人の患者様に担当の看護師を決めて退院まで看護させていただく看護方式。




学生は実習での受け持ち患者様を決めていただく事で疾患の勉強や理解につながる。


なので基本的に国家試験にでるようなメジャーなものが望ましい。



だいたいは病棟の師長さんが決めてくれているんだ。




「河田さん、こちら看護学生さんです。勉強のために実習に来てるのでよろしくお願いします。」


師長さんに案内され、病室に入ると患者様に私を紹介してくれた。


「吉岡です。よろしくお願いします。」


私は慌てて頭を下げた。



頭を上げると、優しそうなおばあちゃんと横には付き添いの女性が座っていた。


「あらあら、可愛いお嬢ちゃん。よろしくね。」




…ああ、足の骨折だ。



私はすぐわかった。


なぜなら足が台の上に乗せられ、紐で引っ張られていた。
足先には錘がぶら下がっている。



整形で特徴的な治療の牽引。


骨折した足を整復するために錘で患部を引っ張っていた。





河田さんの病名は【大腿骨頸部骨折】


これは高齢者の代表的な骨折。


大腿部の付け根のところの骨が折れること。

高齢者の女性に多いんだ。
転倒して骨折なんて事がよくある。



心臓の機能などに問題なければ大体が手術へとなる。



この日は午後から主治医より本人と家人に手術についての説明があった。


「手術しない場合は歩けなくなります。また、手術をしても一つランクが落ちる事を思っていてください。」


模型とパソコンの画面を用いて、一つ一つ丁寧に説明する。

映し出されたレントゲンはキレイに骨折のした所が見て判った。


「つまり杖で歩いてた方は車椅子、歩いていた方は杖での歩行ぐらいがゴールになると思います。」



「そうなんですか?元通りに歩けるようにはならないんですか?!」




インフォームドコンセント。


昔はお医者様の言いなりに…という事もあったかもしれないが



今は抗生剤投与するのにも同意書をもらう。


手術についても麻酔を含めて様々なリスクを説明したうえで本人または家人に書類にサインをもらう。



きちんとしなかったら今はすぐに訴訟問題になってしまう。



つまりインフォームドコンセントとは、こちらから十分な情報を伝えたうえで最終判断を患者様が選択できる権利。


「手術は腰椎麻酔をさせていただきます。下半身が痺れた状態に…」


チラッと河田さんの方を見ると不安そうに、ただ説明に頷いていた。


一通り手術の説明が終わると、主治医より


「何か質問はありますか?」


家族を見回し、尋ねた。



「もう、こちらは素人なので全てお任せします。」


河田さんは深々と頭を下げた。

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