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3月23日金曜日(晴れ後曇り)

あっという間に日付が変わった。

普段はなかなか時間が過ぎないのに、こんな時は経つのが早い…

 

 

あなた大丈夫?」

陽子に笑ってみせた。
だけど、顔が引き攣る。

 

 

格好わるい。

大丈夫じゃないけど…大丈夫だよ。

うん、大丈夫だ。

 

 

「小林さん、頑張ってくださいね。」

優花ちゃんが病衣に着替えさしてくれた。
そして、久しぶりの点滴。

 

 

うん。
大丈夫だ。

ふぅー…

深呼吸、深呼吸。

緊張してるみたいだ。
どんなに簡単とか、大丈夫とか説明されてても検査や手術は緊張するよ。

 

 

「こんにちわ。」

佐々岡先生。
よろしくお願いします。

 

 

「ちょっと動脈に印つけさしてくださいね。」

ゼリーをお腹に
塗ってエコーをする。
マジックで印を入れる。

 

 

「肩、注射しますね。」

 

 

…私はこの先どうなるのかな?

順調だと…元気になると信じてたのに。

逆戻りしたようで不安になる。

 

 

みぞおちの辺りがが痛い。
ストレスかな…

 

「行きますよ。」

天井が動く。

 

 

担架の上。
内視鏡の部屋へ向かう。

 

 

口の中がカラカラだ。

 

 

 

何故かふと浮かんだ顔。

…貴志。

 

 

どうしてるかな。

会社は年度末だから忙しいんだろうな。

今も不思議に思うこと。

何故か先に私の方が出世してしまった。

 

 

いつも仕事手伝ってもらってたのに。
能力も人望も貴志の方があったのに。

 

 

でも、あいつは笑ってたんだ。

『おめでとう。』って。

私に愚痴一つ、言わなかった。

実際には周りから、家族からいろいろ言われたらしいのに…
貴志はその時も、そしてその後も何も変わらなかった。

 

 

仕事でも私生活でも私を支えてくれた。

笑顔で。

 

 

 

「はい、小林さん終わりましたよ。」

心配してたけど、呆気なく10分ぐらいで終わった。

 

 

ガラガラ…

病室に戻る。

まるで自分の家に帰ってきたような感覚だった。

 

 

それだけの時間を、このベットで過ごしたという事。

 

 

「失礼しますね。」

お腹に付けた管をチューブを付けてパックにつなげた。

 

 

「しばらく開けっ放しにします。痛くなったり、ムカムカするようなら言ってくださいね。」

はーい。

ふぅ。

 

 

鼻に入ってたチューブが抜けたから楽になった。

気持ち悪くて、無意識に抜いてしまった時は怒られたなぁ。

 

 

「小林さん、お腹の管引っ張ったりしないように気をつけてくださいね。」

自分のお腹から生えた管を見て、慌てて左右に首を振る。

とんでもない。
流石に怖くて触れないよ。

 

 

もう、これ以上は何もないよな…

身体に穴が沢山できたけど、これできっと最後だ。

やる事は全部やった。

あとは元気になるだけだ。

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