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3月22日木曜日(晴れ)

「こんにちわ。」

声かけられて振り向く。

 

性のお年寄りが立っていた。
白髪を真っ黒に染めて、化粧をバッチリしている。

私の隣の部屋のおばあちゃん。
シワいっぱいにいつもニコニコしているのが特徴的。

 

 

[こん、にちわ]

私も笑顔を返し、頭を下げた。

 

 

「お見舞いもらったんだけど、一人じゃ食べきれないから。」

手にはフルーツをもっていた。

私も食べれないけど…
その事は言わずに、善意を受け取る。

 

 

「早く退院したいねぇ。」

 

 

その言葉に、私は頷いた。

入院しているほとんどの人の一番の願い。

退院。

はやく退院したい。

 

 

おばあちゃんの病名は、腰部の圧迫骨折。

コルセットをつけてリハビリをしていた。

お互い、リハビリ室で顔を合わせてたのが仲良くなったきっかけだ。

「いつまでも待たせていると淋しいだろうからね。」

リハビリ中も、笑顔。
弱音をはかずに頑張る姿に私は勇気づけられた。

自宅で父親の介護をしていた。
ベットから起きるため介助する時にバランス崩し腰を打ったらしい。

 

 

 

「あんな事で、骨が折れるなんて情けない…」

今は入院のため父親は施設に入所中。
退院をずっと待ってくれてるんだ。

 

 

74歳のおばあちゃんが100歳近い父親の介護…

高齢化社会とはいうけど

 

 

「ちゃんとご飯食べてるかねぇ。」

介護なんて大変なのに、入院中も自分の事より親の心配ばかり…

病気になると自分だけが不幸なんだ…とか

自分だけがなんで苦しまないといけないんだ…とか

考えていた。

 

 

 

病院のロビーに座って、他の人の話しを聞くと自分が情けなかった。

事故で首から下をまったく動かせなくなった人。

脳の障害の麻痺のせいで寝たきりになった人。

足が腐り切断した人。

治療法がなく、毎日激痛と闘ってる人。

 

 

沢山の人が、それぞれの闘いをしていた。

私だけが辛いんじゃなかった。

…なんでだろう。

みんな普通に生きてたのに、何でこんなに差ができるんだ。

 

 

みんな、普通に生活をしていた。
もちろん望んで病気になったわけじゃない。

皆、とにかく生きる事に精一杯。

 

 

それを助けるために

医師も
看護師も
リハビリの先生も
栄養師さんも
レントゲン技師さんも
薬剤師さんも…

みんなが精一杯。

生きる事に真剣な場所…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぅ…

リハビリが終わり、ベッドに横になる。

身体が重たい。

なかなか自由にならない。

少し息苦しさを感じて、ゆっくり息を吸い込んだ時だった。

 

 

いたっ!

いたたたた…

 

 

 

 

う…

 

まただ。
みぞおちの辺りが痛い。

胸が…背中が苦しい…

 

 

いつもしばらくしたら落ち着くんだ。

でも…

少しずつ時間が長くなってきている気がする。

 

 

看護婦さんを呼ぼうか…
言った方がいいかな…

でも、大したことなかったら悪いし。
また嫌な顔をされたくないしなぁ。

 

迷惑かけたくない。

 

 

いたたっ!

 

 

 

 

…ふぅ
落ち着いた。

 

身体中、汗びっしょりになっていた。

以前、胃潰瘍になって血を吐いた事があるけど…

似たような痛み。

 

 

明日、カメラが胃に入るから、何かあったらわかるはずだよな…

入院していると気持ちまで患者になってる。

大したことないことまで神経質になる。

訴えてしまう…
甘えてしまう…

 

 

ボタン一つで、誰か来てくれるから。

弱い自分が顔を覗かせる。

気持ちだけは、しっかりしよう。

負けないように。

私は明日はお腹に穴を開ける。

生きるために!

 

 

 

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