あっという間に日付が変わった。
普段はなかなか時間が過ぎないのに、こんな時は経つのが早い…
「あなた大丈夫?」
陽子に笑ってみせた。
だけど、顔が引き攣る。
格好わるい。
大丈夫じゃないけど…大丈夫だよ。
うん、大丈夫だ。
「小林さん、頑張ってくださいね。」
優花ちゃんが病衣に着替えさしてくれた。
そして、久しぶりの点滴。
うん。
大丈夫だ。
ふぅー…
深呼吸、深呼吸。
緊張してるみたいだ。
どんなに簡単とか、大丈夫とか説明されてても検査や手術は緊張するよ。
「こんにちわ。」
佐々岡先生。
よろしくお願いします。
「ちょっと動脈に印つけさしてくださいね。」
ゼリーをお腹に
塗ってエコーをする。
マジックで印を入れる。
「肩、注射しますね。」
…私はこの先どうなるのかな?
順調だと…元気になると信じてたのに。
逆戻りしたようで不安になる。
みぞおちの辺りがが痛い。
ストレスかな…
「行きますよ。」
天井が動く。
担架の上。
内視鏡の部屋へ向かう。
口の中がカラカラだ。
…
何故かふと浮かんだ顔。
…貴志。
どうしてるかな。
会社は年度末だから忙しいんだろうな。
今も不思議に思うこと。
何故か先に私の方が出世してしまった。
いつも仕事手伝ってもらってたのに。
能力も人望も貴志の方があったのに。
でも、あいつは笑ってたんだ。
『おめでとう。』って。
私に愚痴一つ、言わなかった。
実際には周りから、家族からいろいろ言われたらしいのに…
貴志はその時も、そしてその後も何も変わらなかった。
仕事でも私生活でも私を支えてくれた。
笑顔で。
「はい、小林さん終わりましたよ。」
心配してたけど、呆気なく10分ぐらいで終わった。
ガラガラ…
病室に戻る。
まるで自分の家に帰ってきたような感覚だった。
それだけの時間を、このベットで過ごしたという事。
「失礼しますね。」
お腹に付けた管をチューブを付けてパックにつなげた。
「しばらく開けっ放しにします。痛くなったり、ムカムカするようなら言ってくださいね。」
はーい。
ふぅ。
鼻に入ってたチューブが抜けたから楽になった。
気持ち悪くて、無意識に抜いてしまった時は怒られたなぁ。
「小林さん、お腹の管引っ張ったりしないように気をつけてくださいね。」
自分のお腹から生えた管を見て、慌てて左右に首を振る。
とんでもない。
流石に怖くて触れないよ。
もう、これ以上は何もないよな…
身体に穴が沢山できたけど、これできっと最後だ。
やる事は全部やった。
あとは元気になるだけだ。