働く看護師皆さんのための13サイト☆現在準備中

3月20日火曜日(雨)

今日は空気がひんやりしている。
湿度が高いのかな。

 

 

外はやっぱり雨が降っていた。

雨の降っている日は、空気の質が違うのでなんとなく感じる。

テレビが点いてる時も何か離れた所からでも、何故か肌に感じてしまう。

 

 

子供の時からそうだった。

もしかしたら皆もそうなのかもしれないけどさ…

暖かかった冬。
そう思ってたら3月下旬なのに今は肌寒い。

雨なので病院の外への散歩は中止になった。

 

 

「残念ですね。」

私の座った車椅子をゆっくり押しながらリハビリの先生が声かけてくれる。

私は首を左右に振って笑ってみせた。

強がりじゃない。
ホントに気分はいいんだ。

 

点滴が無くなり、オシッコの管も無くくなり、胸のモニターも血圧計も無くくなり
呼吸器の電源がついに消された。

 

 

 

…私の傍から機械の音が消えた日。

たとえ点滴だけでも、体を拘束するものが一つあるとどれだけ苦痛か…

違和感、ストレス、不自由さ…

だけど、今は私を拘束するものが無い。

 

 

 

リハビリ室までの道のり。
私は胸を張って、顔を前に向けていた。

以前のように目を逸らす事はなくなった。
俯く事がなくなった。

沢山の人が外来を待っていた。

皆、どこか身体が悪いから来てるんだ。

長い待ち時間。
待ってるだけで体調が悪化しそう。

 

 

病気になって明るく笑ってる人なんて当然いない。

私も、ずっと同じ表情してたのかな…

遥ちゃんとの出会いからは、笑う事と顔を上げる事を意識してる。

ちゃんと笑えてる自信はないけど。

病気から逃げない。

 

 

 

 

「小林さん、すごい!」

リハビリの先生が横で手を叩く。

足が…膝がガクガク笑う。
両手で精一杯平行棒を握りしめ体を支える。

 

 

永いベッドの上での生活で細い棒きれのようになった足。

自分の足には見えない。

私は自分の力で、車椅子から立ち上がった。

自分の足で地面を踏みしめた。

 

 

ふぅ…

《ドスン》

力尽きてすぐに椅子に座ってしまった。

時間にして一分ももたなかった。

私には長い時間に感じた。

 

 

額から汗が流れる。
充実感で胸が満たされた。

肩で息をする。

 

 

ふぅ…

また、一歩進めたんだ。

 

 

「まだ無理しないで、酸素使った状態で歩行器で歩くのを今の目標にしましょうね。」

車椅子で、深呼吸を促された。
背中をゆっくり、さすってくれる。

 

 

リハビリの先生が指を1本立てて一言付け加えた。

「一人で無理はしないでくださいよ。」

 

 

転倒した事があるから釘をさされてしまった。

はぁーい…

 

 

 

 

次へ

前へ