4月30日月曜日(晴れ)
ああ
気持ちいいなぁ。
身体がふわふわしてる。
温もりに包まれて軽い。
花の香り。
黄、白、青、ピンク。
色鮮やかな花に舞う蝶の群れ。
んー
空気が美味しい♪
世界が明るい。
空から降りそぞくだけでなく、存在するもの一つ一つが光に満ちている。
川に魚が泳ぎ、小鳥が囀ずり、これが天国なのかな?
…苦痛から解放された。
此処に来るのは2回目だっけ?
いつまでもいつまでもいの世界で暮らしたいとさえ考えてしまう。
だけど、駄目なんだ。
私は此処に留まらない。
私は後ろへ引き返す。
此処に居れば確かに幸せな気持ちになる。
苦しみからも逃れられる。
どんなに苦しくても
どんなに辛くても
私は逃げないんだ。
此処には誰もいない。
妻
娘
父
母
友
誰もいない世界。
だから生きる。
死にたくない…
みんなと生きたい。
今の生きてる世界が本当は地獄だったとしても。
その世界には私の大切な人がいる。
生きる理由はそれだけで十分だよ。
一歩一歩と引き返す。
後悔はない。
力強く踏みしめ自分の意志で戻る。
明るい世界はだんだん暗闇が増していく。
温かさはなくなり冷たくなり。
軽かった躰が重たくなっていく。
ばいばい。
…
痛っ!
痛みが全身に広がり音が耳に入ってくる。
《プシュープシュー》
聞きなれた音。
お帰りと言ってるように聞こえた。
私はまだ生きていた。
…よかった。
死ぬことはやっぱり怖い。
受け入れる事ができない。
私には心残りが山ほどあるんだよ。
いつかは年老いて死ぬ時は必ず来るだろう。
だけど、今はまだ死にたくない。
自分がいなくなることが怖い…
この世界から存在しなくなる事が怖い…
一年、二年と時が過ぎて行き
やがて、忘れられていくことが悲しい…
みんなの記憶から小林裕が消えていくのが
私の本当の死だ…
人の心の中ででも永遠には生きれない…
いつかは色褪せて消えてしまうんだ…