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3月 8日木曜日(晴れ)

うーん。
うーん。
うーん。

せーの…
うぅうううぅうん。

 

 

はぁっ、はぁっ、はぁっ…

ウンチが出ない。

 

下剤が効いたのか、お腹はグルグルしてるのに。

息切れしてしまう。

 

 

「出ませんか?」

心配そうな表情で、優花ちゃんが声をかけてくれる。

私は首を左右に振った。

 

 

ゴメンなさい。
出そうな感じはあるのに…
気持ち悪い。
お腹が痛い。

歯痒くてイライラする。

 

「きばりすぎても血圧が上がるし、身体によくないので…」

少し遠慮気味に言葉が小さくなる。

 

 

「ちょっと出しやすいように浣腸しませんか?」

うぅ…
浣腸か…

でも、お腹が苦しいし。
仕方ない。
今のままだとしんどくてたまらない。

私は渋々頷いた。

 

 

《ガチャ…》

 

優花ちゃんは一度、部屋から出ていくと浣腸の液を手にして戻ってきた。

 

 

下着を下ろし、お尻が丸だしになる。

「失礼します。」

 

肛門から、何か固いものが入ってきた。

「液が入ります。できるだけ、出さないように我慢してくださいね。」

 

 

うっ。
中に何か入ってきて、気持ち悪い。

出ないように、お尻に力を入れて我慢した。

 

 

「どうしても我慢できなくなったら液を出してくださいね。」

 

言葉に従ってゆっくり力を抜いた。
何かが出てくる。

浣腸なんて生まれて初めてしたよ。
気持ち悪い…

 

 

「…液しか出ませんね。」

出たものを確認した優花ちゃんが残念そうに言った。

 

 

浣腸も結局、効果がなかった。
やっぱりウンチは出ないまま。
お腹も張ったまま。

ふぅ。

便秘が苦しい事を今まで知らなかった。

出るものが出ない苦しみ…

どうしたらいいんだろ…

 

優花ちゃんが手袋を着け指先にゼリーを付けていた。

何をするんだろ?

 

 

「ごめんなさい。ちょっと我慢してくださいね…」

 

え?
何を?

あうっ!!

戸惑っていると肛門に指を突っ込んできた。

 

うぅ…

何するんだ?

 

 

「固い便が触れますので摘便しますね。」

摘便?何それ?

 

 

うっ!

いたたたた…

 

私の肛門から指で少しづつ便をほじくり出す。
コロコロした固い便が出てくる。

 

だんだん柔らかい便になっていく。
お腹が少し楽になった。

 

…嫌な顔せず一生懸命、手で便を出してくれている。

部屋の中に広がるウンチの臭い。

 

 

もう恥ずかしいやら情けないやら…

迷惑ばかりかけて…

 

 

 

《ガラガラ…》

 

窓を開けて換気する。
そして、お尻を拭いてくれた後に便器を片付ける優花ちゃん。

 

「よかったです。また、出そうなときは遠慮しないでくださいね。」

そう言ってくれてもやっぱり遠慮してしまうよ…
恥ずかしいし、汚いから…

 

 

「あれ?」

優花ちゃんの手が止まる。

何?

 

 

「あー!」

 

何、何?
どうしたの?

 

 

「お尻赤くなって皮が破れてる…」

あぁ…最近お尻痛かったもんなぁ。

ずっと言えてなかった。

 

 

「ゴメンなさい…床擦れを創ってしまうなんて…」

床擦れなんだ。
まあ、我慢できない痛みじゃないし大丈夫。

 

 

「きちんと除圧してたと思ってたのに…看護師失格だよぉ…」

 

うつむいて小さい声で独り言をいう。

…そんなに気にしなくていいよ。
たいしたことないから。

 

 

「ごめんなさい…ごめんなさい。」

私に何度も繰り返し頭を下げる。
こちらが恐縮してしまう

 

[きに、しない、で]

「…」

 

《がちゃり…》

私の指す文字も目に入らない様子で部屋から出ていった。

 

 

床擦れか。

でも、優花ちゃんは注意してみてくれてたよ。

 

柔らかいエアマット使ってくれてたし。
時間毎にきちんと体の向きも変えてくれてた。

何もしてなかったんじゃないから気にする事ないのにな…

私が我慢せず早く言えばよかったんだ…

罪悪感で一杯になる。

 

つぅ…

みぞおちの辺りが痛い…

優花ちゃん、ゴメンね。

 

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