3月14日はホワイトデー…のはずだった。
私の目の前には何故かチョコレート。
「はい、1ヶ月遅れたけどチョコレート。」
「ぱぱぁ、おいしいよ♪」
ホワイトデーだけど特別にバレンタインタインデー。
実は1ヶ月前にもきちんと作ってくれて、私の枕元に置いてくれてたらしい。
その時は意識がなく食べれなかったままだった。
だけど昨日から食べる訓練を始めた。
そこで改めて作ってきてくれたというわけだ。
「冷蔵庫に入れておくから、食べれるように頑張ってね。」
「てね。」
うん。
やる気が出たよ。
有り難う。
毎年二人でチョコレートを手作りしてくれる。
さすがに製品みたいに美味しいものではないが、そんなのは関係ない。
気持ちが嬉しい。
ただ毎年お返しが高くつくんだよな。
お小遣いがなくなってしまう…
「何?苦笑いして?嬉しくなかったの?」
その言葉に慌てて頭を左右に振った。
[すごく、うれ、しい]
うん。
約束する。
1ヶ月後の4月14日には退院していっぱいのお返しするんだ。
みてろよ!
頑張らないと。
目標は1ヶ月以内だ!
よいしょ。
よいしょ。
頑張って自分で身体を起こしてみた。
思ってたより動ける。
…痛。
筋肉痛で力が入りにくい。
リハビリで運動量が増えてきたから、手も足も腹筋も痛い。
でも、じっとしてられないんだ。
1日でも1秒でもはやく元気になりたい。
少しでも自分でリハビリしないと…
ベット柵を握り足を降ろした。
あ…
身体が斜めになる。
とっさに手を出したいのに上手く動かせず…
《ガシャーン》
痛ーーー!!
受け身もとれなかった。
床に血が流れている。
起きれない。
動けない。
誰か助けて…
《ガチャ》
「きゃあぁああ」
部屋に戻ってきた陽子の悲鳴が響いた。
「…馬鹿」
青ざめた顔で陽子が呟く。
「幸い頭部CTに異常はありませんでした。骨折も見当たりません。」
佐々岡先生が検査結果の説明をしてくれた。
よかった。
「本当にすいませんでした。」
陽子が深く頭を下げた。
頭からの出血は2針縫う事になって包帯が巻かれている。
「小林さん。」
優花ちゃんが怖い顔でにらんでる。
陽子の悲鳴に皆が駆け付けて大騒ぎになった。
皆で慌てて私の身体を持ち上げてくれた。
ストレッチャーに乗ってそのまま検査室へ。
そして病室へ戻ってきた。
すごい迷惑をかけてしまった…
そんなつもりじゃなかったのに…
「身体を休める事も治療なんですよ!」
優花ちゃんにいつもの笑顔はない。
「ゆっくりする事が遠回りになるわけではないです。無理する事が遠回りになるんですよ。」
佐々岡先生は表情は変わらなかったが口調は怒っていた。
みんなと目を合わせれない。
ただ、少しでも早く動けるようになりたかっただけなのんだ。
迷惑かけないよう頑張るつもりだったのに…
自分の事を自分でできるようになりたかっただけなんだよ…
ごめんなさい。