今日は日曜日。
…で、合ってるよな?
日付も曜日もわからなくなってしまう。
毎日、同じ日の繰り返し。
…それは仕事してた時も一緒だったか。
昨日の件があってか、陽子は今日は来てない。
退屈だなぁ。
「おはようございます。」
優花ちゃん、おはよう。
今日、出勤だったんだね。
「昨日来られてた方、お友達ですか?」
…
悪気のない言葉。
わかってる。
だけど胸がズキッとした。
うん、友達
…だったよ。
ずっと親友だと思ってた。
だからこそ耐えられない言葉だった。
「いいなぁ、うらやましいなぁ。」
うらめしいよ…
あいつも信じてた自分の事さえも。
優花ちゃんは呼吸器の数値をチェックしている。
「私、地元で就職しないでここの病院に来たんですよ。」
こっちの人じゃないんだ。
少し訛りが違うとはおもったけど。
「少しでも大きい病院で働きたかったからなんです。」
そう話しながら体温計をはさんでくれた。
…少し表情が暗い。
「ただ…なかなか他の看護師さんと休み合わないんですよね…」
看護師さんの勤務は不規則だからね。
仕方ないんだろうな…
「お盆も、お正月も仕事ですから地元にもあまり帰れないし…」
うわぁ…
それじゃあ、なかなか気分転換できないよなぁ。
辛いね。
そういえば、よく貴志に愚痴いったりしてたな。
仕事の事、子育ての事いろいろ相談にのってくれた。
助けられてたんだなぁ。
なのに…
どうして…
《ピピピピ》
「あ、今日は熱が下がってますね。よかった。」
そっか、それで今日は少し身体楽なんだな。
私はもう友達なんていらない…
身体が苦しいのに
心までこれ以上苦しみたくないから。
「吸入しておきますね。」
優花ちゃんが機械のスイッチを押す。
何だろう?
優花ちゃん、何かいつもと様子が違う気がする。
表情も声も仕草も
何かぎこちないし…
…あれ?目が少し赤い。
「…」
《プシュープシュー…》
沈黙。
静かな病室。吸入の作動音が二人を包み込む。
「…小林さん。」
また暗い顔。
初めてみる表情。
「看護婦ってたくさんの人と出会えるんです。」
そうだよね。
きっと沢山の患者さんと接してきたんだろうなぁ。
きっと私もその中の一人でしかないよなぁ。
「私は他の人を知る事、いろんな考え方や人生を知ることが自分を知る事ができると思うんです。」
呼吸器の蒸留水を足し、回路の中の水を抜く。
業務しながら話しかけてくれるので今は表情が見えない。
「仕事を一生懸命頑張れば、笑顔が返ってくるんです。私、人の笑った顔が大好きだから私も嬉しくなるんです。」
笑顔か。
私も笑える日が戻ってくるのかな。
いつか入院生活を笑い話にできる時がくるのかな。
「だから看護師になってよかったと思います。」
しっかり考えてるんだね。
私なんて食べるために必死なだけだ。
自分の仕事についてそこまで考えてなかったな。
でも、優花ちゃん。
私にじゃなく自分に言い聞かせてるみたいな感じがする。
「…お母…が…も…」
…え?
上手く聞こえない。
震えた声。
途切れ途切れに聞こえた。
「…」
《プシュープシュー…》
肩が震えてる。
何があったんだ?
大丈夫なのか?
「…あ、ごめんなさい。変な事いいました。私…失礼します!!」
あっ、待って!!
《バタン…》
泣いてた…
涙が流れてた…
叫びたいのに…声が出せない。
引き留めたいのに手を伸ばせない。
いっぱい助けてもらっているのに…
私は何もできない…
くっそおぉ…
悔しい。
歯がゆい。
情けない。
いっぱい感謝してるのに
たった一言
ありがとう
コレさえも伝えれない。
私はただの人形だ。
此処に存在しているだけなんだ。
ただ生きてるだけの存在