驚いてばかりの私が、午後イチには逆に皆さんを驚かせてしまった。
…カラオケ大会。
患者さんが順番に歌っていく。
ほとんど知らない曲だったけど楽しそうに歌ってる姿をみていると、こちらも嬉しくなる。
「えー、続きましては飛び入りで学生さんが歌いまーす。」
司会役の作業療法士さんが私を手招きする。
皆の視線が私に…
「いや、あの…わたしは…」
私の言葉を遮るように一斉に拍手。
どひゃー…どうしよう…
断れる雰囲気はなく、気がつくと舞台の上へ。
「こんにちわ。お名前は?」
「あ、吉岡優花デス…」
ガチガチになった私はマイクを渡されると覚悟を決めた。
えぇーい、なるようにしかならない。
~♪~
うぅううう…仕方ない…
「あ””ぁあ~♪」
思いきって歌い出した。
…
チラッと患者様を見渡した。
うっひゃあ!!
予想通り皆の目がキョトンとしている。
顔がひきつってる。
みるみるうちに自分の顔が熱くなるのが判った。
多分真っ赤になってる。
…そう、私は極度の音痴。
カラオケは一番の天敵だったりするんだ。
「吉岡さんでした、ありがとうございました。」
私は一礼するとそそくさと舞台から降りた。
まさか実習でカラオケを歌うなんて思わなかったのにぃ…
こうして特殊な精神科実習の初日が終了した。