原井さんは、これからどうなるのかな…
麻痺はどのくらいまで治るの?
言葉はしゃべれるようになるの?
ご飯は食べれないまま経管栄養が必要になるの?
甥の男性は、もう本当に二度と助けてくれないの?
……
うぅ~~
いくら考えても、私には解決できる問題じゃない。
甥の方の『無責任』という言葉が私の胸に突き刺さったまま…
ついに実習の最終日になった。
「おはようございます。」
頑張って、出来るだけ明るく挨拶した。
病室に入ると原井さんは外を見てた。
その日の原井さんは、いつもと違ってた…
「あれ?!お髭…剃ったんですか?」
伸ばしっぱなしだった髭が綺麗になってた。
「お嬢ちゃんのために剃ったんだよ。」
坂さんが茶化しながら言った。
その言葉にも原井さんは、窓の外を向いたまま。
「今日は初めて、ご飯を残さず食べたよねぇ。」
樋口さんもニヤニヤしながら教えてくれた。
「優花ちゃんに、少しでも心配かけたくないんじゃないのか。」
田辺さんが話しに加わる。
「原井さん…」
原井さんは、横を向いたままだったけど耳まで真っ赤になってた。
本当に…私のため…?
「原井さん、散歩へ行きませんか?」
私の声にチラリとこちらを向いた。
「…ん。」
軽く頷く。
「デートか。いいねぇ。」「行ってらっしゃい。」
皆に声をかけられながら、病室を後にした。
車椅子でゆっくりゆっくりと病院の中庭を回った。
「冷えますね。」
まだ外は寒い。
原井さんは、ずっとうつ向いてた。
表情は固いまま。
日の当たる場所を見つけて、そこで休憩する。
病院を見上げた。
大きいなぁ…
この建物の中に、沢山の苦しみ、悲しみが集まってるのか…