病院へ行くと、いつもテキパキと働いている看護師さんたち。私たちはつい「白衣の天使」というイメージを持ちがちですが、その舞台裏では、私たちの想像を絶するような過酷な戦いが繰り広げられています。
特に今、大きな問題となっているのが「夜勤(やきん)」です。
2025年度の最新調査(日本医療労働組合連合会:医労連)によって明らかになったのは、単に「忙しい」という言葉では片付けられない、日本の医療現場のひずみでした。この記事では、現役看護師さんのリアルな声とともに、その実態を紐解いていきます。

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16時間って、学校2日分!?数字が語る驚きの長時間労働

まず、驚くべきはその「働いている時間」の長さです。
「2交替制」の落とし穴

現在の多くの病院では、1日を2つのチームで回す「2交替制」が採用されています。一見効率が良さそうですが、その実態は「16時間以上の連続勤務」が当たり前。
これは、例えば夕方の5時に出勤したら、翌朝の9時過ぎまで一睡もせずに(あるいはわずかな仮眠だけで)働き続けるということです。高校生の皆さんの授業時間に例えるなら、「1時限目から放課後の部活まで」を2日分、ぶっ続けでこなすようなもの。そう考えると、どれほど異常な長さかが分かるはずです。
休む暇もない「8時間未満」のインターバル

さらに深刻なのが、仕事が終わった後の休み時間です。調査では、夜勤が終わってから次の勤務が始まるまでの時間が「8時間未満」というケースが4割もありました。
仕事が終わって家に帰り、ご飯を食べてお風呂に入れば、もう次の出勤時間が迫っている。これでは、心も体も休まる暇がありません。
現場から届いた悲鳴:ナースコールに応えられない恐怖

数字以上に重いのが、実際に現場で働く看護師さんの言葉です。都内の医療機関で働くAさんは、データには表れない「心のすり減り」を語っています。
「死ぬかと思った」という言葉の重み

ある日、人手不足でどうしても手が回らず、ナースコールへの対応が遅れてしまったとき、患者さんからこう言われたそうです。 「早く来てほしかった。死ぬかと思った」
看護師さんは、誰よりも「助けたい」と思ってその仕事を選んだ人たちです。それなのに、あまりの忙しさに手が届かない。自分のせいで誰かの命が危険にさらされるかもしれないという恐怖は、想像を絶するストレスです。
経営難がさらなる追い打ちに

驚くべきことに、これほど現場が悲鳴を上げているのに、病院の経営が苦しいという理由で「夜勤の人数をさらに減らそう」という動きさえあると言います。これでは、患者さんの安全を守るための防波堤が、内側から崩されていくようなものです。
なぜこんなに大変なの?「お金」と「人手」の複雑な事情
なぜ、これほど過酷な状況が放置されているのでしょうか。そこには、日本の医療が抱える構造的な問題が隠れています。
健康を削って稼がざるを得ない現実

夜勤は、がんの発症リスクを高めるなど、健康への悪影響があることが医学的にも指摘されています。しかし、看護師さんの給料は「夜勤手当」がないと生活が厳しいという現実もあります。
特に若い看護師さんの中には、将来のために、あるいは今の生活のために、健康リスクを承知の上で無理をして夜勤に入り続けている人も少なくありません。
増え続ける「夜勤専従」という働き方

日中の仕事はせず、夜勤だけを専門にこなす「夜勤専従(せんじゅう)」の看護師さんも増えています。その割合は、2018年からのわずか数年で10ポイントも増加し、18.7%に達しました。
これは、普通の交代勤務だけではシフトが回らないほど人手不足が深刻化している証拠です。現場は、いわば「自転車操業」のような状態で、ギリギリのバランスで成り立っているのです。
まとめ:私たちの「当たり前」を守るために

看護師さんの夜勤問題は、決して「病院の中だけの話」ではありません。
- 異常な長時間労働で看護師さんが倒れてしまう。
- 疲れ切った状態でミスが起きてしまう。
- 人手不足で、受けられるはずの医療が受けられなくなる。

これは、私たちがいつか病気やケガをしたときに受ける「医療の質」に直結する問題です。つまり、看護師さんを守ることは、巡り巡って私たち自身の命を守ることと同じなのです。
「大変そうだね」で終わらせず、この過酷な現状を社会全体でどう変えていくべきか。安全で安心な未来の医療を作るためには、まず私たちがこの現実を知り、声を上げていくことが第一歩になるはずです。

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