しばらくして妻がやってきた。
物がとりやすいように、食べやすいようにいろいろ買ってきてくれた。
柵にぶら下げる入れ物。
おにぎりやパン、お菓子。
スプーンやフォーク。
僕の手は目の前にあるものでも手を伸ばせない。
目の前にあるのに届かない。
いろいろ考えてセッティングしていく。
僕は思わず
「生まれてくる子供の名前…『げんき』にしようか?」
口にしていた。
妻は否定せず
「いいんじゃない?」
と答える。
単純すぎるかなぁ。
でも、一番大切なことだとおもう。
健康であること。せめて家族くらいはと願いたい。
昼食の時、持ってきてくれたスプーンでご飯食べようとする。
よいしょ。
…ん。
だけど、持ち上がらない…
スプーンが重たい…
ふぅ…
食べやすいようにように柄が大きいものを買ってきてくれたのに、僕の手は支えることができなかった。
このままだと、子供生まれても抱っこすることもできないや…
「大丈夫ですか?」
ご飯を食べるのに苦労していた僕をみて、看護師さんと相談しハーフ食で代わりにカロリーの高いジュースやゼリーが付くことになった。
本当は普段は二人前くらい食べてる。
別に好き嫌いもないから病院食も平気。
だけど、今回は手が動かない。
ベッドで横になっているだけなので食べれる量もへっている。
それと、もうひとつの理由。
献血ベニロンの点滴を始めたあと、頭重感・目眩・倦怠感が強く出て苦しくてしたかなかった。
気がつくと眉間に皺が入ってる。
なんどか寝返り繰り返す。
我慢、我慢。
手が動くようになりますように…お願いいたします。
喉の痛みもあったせいか、少しウトウトし始めると自分の唾液で咳込み目が覚める。
いっそ眠れたら楽なのに。
冷房が効いている部屋なのに、何度も汗でビッショリになる。
妻が家での子供の話しをする。
「寂しいね、会いたいねって言ってる。二人でパパの布団で寝てるよ。」
実は、僕が夜勤のときは布団使ってるのは知っていた。
でも、普段は一緒に寝てるわけじゃない。
「今は男の子は僕だけだから守るよ。」
小学一年生の長男がませたこと言っている。
泣き虫でいつも、お姉ちゃんに泣かされてるくせに…強がってさ。
今月の27日は長男の誕生日。
その時には外泊ぐらいできるようになっているかな?
午後から、事務の方が来てくれて高額医療についての説明をしてくれた。
手続きの仕方なども丁寧で、わかりやすかった。
夕食のときには風邪薬とトローチを先生が処方してくれていて一安心。
何か一つでも楽になれば、気分がちがう。
どうしても、床擦れ予防のための柔らかいマットが体に馴染まず寝ずらい。
時はイライラしてくる。
横向いても、上に向いても、うつ伏せになっても苦しい。
どうか、明日こそは良くなってますように…
少しでもいいから、お願いします。