もともと神経内科を予定していた僕は今度こそと思い、朝から違う病院へ。
受付をする。
今日こそは、光が見えますように…
また一時間、二時間、三時間と時間が過ぎていく。
待っている間に病院の設備を見て回る。
他の病院来るとついつい、比較する目で見回してしまう。
パンフレットにフットケアのパンフレットがいくつかあった。
今年の病棟の取り組みと看護研究のテーマにフットケアがあがってたので、思わず鞄に詰め込む。
そして、また妻と二人ただ待つ。
ただ待つ。
そして、待合室から人がいなくなったころ…
「〇〇さん。」
ようやく名前が呼ばれた。
不安と期待が混じっていた。
今日までの経過を説明する。
普通なら金曜日に朝起きたら手が動かなかった…と言うと思う。
だけど、まず熱が一週間前にあったことから話した。
今回の症状に大切な事だと思っていたから。
問診が終わり、先生により運動機能や神経機能の診察が始まる。
そして、診断がでる…
神経内科の先生の診断はギランバレー症候群。
その言葉を聞いて思ったことは、やっぱり…だった。
なんとなく覚悟してたので驚きはなかった。
昨日の受診先で言われた通り、様子みてたらどうなってたのだろ?
ただ、ギランバレーということは場合によっては嚥下障害、顔面麻痺、酷くなると呼吸抑制から人工呼吸器の可能性がある。
どのくらい進むのか
どのくらいで改善するのか
リハビリはどのくらいかかるのか
後遺症は残らないか
…わからない
過去に看護した患者様の姿を思い浮かべる。
次に先生から出た言葉。
「私は大学病院から来てる非常勤なんです。入院となったら内科の先生にお願いすることになります。」
なんでも、今年から神経内科の常勤の先生はいないとのこと。
妻は、病名が付いたことがとにかく喜んでいた。
「よかった…」
僕は不安だった。
ギランバレー症候群といっても、当てはまらない症状もある。
本当は違う病気だったら?
治らなかったら?
とにかく、マイナス思考しかでなかった。
情けないことだ…
次は、内科の先生に呼ばれる。
主治医の先生となる。
説明があり、「HCUへ入院しましょう。」と入院が決まる一言。
外来の看護師さんが車椅子を持ってくる。
今日の症状は足の脱力感と左手の震えが出ていた。
安全のため車椅子へ。
初めて車椅子での移動。
低い視線からの風景…
車椅子って、こんな感じなんだ…
入院の検査。
採血、心電図、レントゲン、CTを撮る。
CTは初体験。
ただ、何か気持ち悪かった。
患者様の視線は新鮮だった。
このとき気付いたこと。
座ったり起きたりするとき手に力が入らない…
身体を全然支えられてない。
ふらつく…
自分のことを自分でできないこと…
辛かった。
手首にバンドを付けて病棟へ。
最近の病院では、患者様の間違い防止のために主流になってる。
看護学生時代に患者様の準備してあったリストバンドを自分の手首に試して除けれなくなり、ひたすら謝った苦い経験がある。
本当に馬鹿なことをしたもんだ。
進行し呼吸抑制の危険があるため一般病棟ではなくHCUに入院。
出入り口の扉は看護師を呼んで開けてもらう仕組み。
病室へ案内される。
仕切りのある、ほぼ個室の状態の部屋だった。
ベッドに横になると着替えてモニター、血圧計、サーチレーションを体に。
服を脱ぐのにも力が入りにくく介助してもらう。
足は弾性ストッキング。ベッドは四点柵…
重病人みたいだ。
白い弾性ストッキング…
懐かしいなぁ。
血栓予防のため、手術後や心不全、脳梗塞の患者様にしてもらっていた。
看護研究のテーマにも上げて、期限近くには夜中までかかって仕上げた。
しかし、医者の不養生ならぬ、看護師の不養生だなぁ…
自分が患者になるとは考えなかった…
入院はどのくらいの期間になるんだろ?
お金はいくらかかるかな?
家のことは大丈夫かな?
働けないのに生活はどうなるのかな?
どうしようもない…
誰が悪いとかもない…
同じ事を頭に浮かべては悔しくて、またしても動かない手を叩きつけることしかできなかった。
なんで…
なんで…