JR札幌病院が、国の補助金を17年あまりにわたって不正に受け取っていた問題が明らかになりました。 「病院の不正請求」という言葉を聞いても、少し遠い世界の出来事に感じるかもしれません。しかし、このニュースの核心は、私たちの生活を支える「税金」が長期間にわたって不適切に使われていたという点にあります。
なぜこれほど長い間、不正が見過ごされてきたのか? 具体的に何が行われていたのか? 複雑なニュースの背景を整理し、この問題の全貌をわかりやすく解説します。

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1. 事件の核心:行われていた「人数の水増し」

この問題の中心にあるのは、国の制度を悪用した「数字の偽装」です。具体的には、病院側が実績を本来よりも多く見せかける**「水増し」**を行っていました。
悪用された「特定保健指導」という制度

今回、不正の舞台となったのは「特定保健指導」という制度です。 これは、健康診断の結果で生活習慣病のリスクが高いと判断された人に対し、保健師などの専門家が生活改善のアドバイス(指導)を行うものです。国民の健康を守るための、国の大切な仕組みの一つです。
JR札幌病院では、JR北海道の社員約400人を対象にこの指導を行っていました。
「やっていない」を「やった」ことに
ところが、病院側は補助金を受け取るための報告において、重大なルール違反を犯していました。
- 実際には指導していない人数を上乗せする
- 支援要件を満たしていないケースも「実施した」として計上する
つまり、正規のルールでは請求できない分まで、あたかも正しく実施したかのように装い、架空の実績を作り上げていたのです。

2. なぜ大問題なのか?:消えたのは私たちの「税金」
単なる事務処理のミスであれば、これほど大きな社会問題にはなりません。この事件が深刻なのは、動いているお金の原資が「公的な資金(税金)」だからです。
不正な補助金の流れ

この制度では、実施した人数や内容に応じて、国から補助金が支払われます。今回の不正な流れを整理すると、以下のようになります。
- 病院:水増しした虚偽の人数を健康保険組合に報告。
- 組合:その報告を信じ、国に対して補助金を請求。
- 国:請求に基づき、税金を原資とする補助金を支出。
- 病院:本来受け取る権利のない金額を受け取る。
つまり、国民の健康増進のために使われるべき貴重な税金が、虚偽の報告によって不当に病院へ流れていたことになります。これは公的制度への信頼を根底から揺るがす行為です。
3. 組織の病巣:「昔からやっていた」という思考停止

さらに衝撃を与えたのは、この不正が17年あまりという異常な長期間にわたって続いていた事実です。
2008年から続いていた「慣習」

報道によると、制度が開始された2008年から、担当者による水増し計上が常態化していたとされています。 なぜ、誰も止められなかったのでしょうか? その背景には、組織にはびこる根深いコンプライアンス(法令遵守)意識の欠如がありました。
関係した保健師は、調査に対し次のように述べています。
「過去から行われているのでやむを得ない」
悪いことだと分かっていても、「前任者もやっていたから」「ずっとこうしてきたから」という理由で不正を続けてしまう。この思考停止こそが、17年もの間、自浄作用を働かせなくしていた最大の原因です。

まとめ:このニュースが問いかけるもの

今回のJR札幌病院の問題点は、以下の3点に集約されます。
- 組織的な不正:制度開始の2008年から17年以上、水増し請求が続いていた。
- 税金の毀損:国民の財産である税金が、虚偽報告によって不正に引き出された。
- ガバナンスの欠如:「慣例だから」という理由で不正が見過ごされる組織風土があった。
「長年の慣習」という言葉の裏に隠された不正の実態。 この事件は、一つの病院の不祥事にとどまらず、組織としてあるべき姿や、公的資金の管理のあり方について、私たちに重い問いを投げかけています。


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