ワクチン接種も最初の開始から1年半が経ち、初めの未経験の不安から慣れもでてきて4回目のワクチン接種の声も上がるようになりました。
私の勤務する病院でも接種会場を別棟に準備し地域の住民がスムーズに接種できる体制を整え、対応にあたってきました。
ワクチン接種の仕方については皮下注射がメインでしたのでコロナのワクチン接種が筋肉注射となったときに最初スタッフからは戸惑いの声もありました。
ワクチン接種をするにあたって私はマニュアル作成にとりかかりました。
日本の病院でおこなっている他の予防接種は皮下注射
日本での予防接種は、皮下組織に薬液を入れる皮下注射が一般的でした。しかし、世界では筋肉注射が一般的な接種方法なのです。
実は海外ではインフルエンザワクチンも筋肉注射です。
筋肉注射によるワクチン投与が世界的に行われている理由は、皮下注射よりも抗体産生が高く、局所の副反応も小さいためで、CDCや諸外国のガイドラインでも推奨されています。
なぜ日本だけ皮下注射が多いかというと、1970年代に抗菌薬やスルピリンなどの鎮痛剤の筋肉注射によって薬害(大腿四頭筋拘縮症)が社会問題になったからだそうです。
ワクチンとは関係ありませんでしたが、当時は筋肉注射そのものが避けられてしまうことになり、ワクチン接種についても皮下注射になってしまったのです。
その結果、厚生労働省の予防接種ガイドライン では、ほとんどのワクチン接種が上腕三頭筋部位での皮下注射とされています。
ただし、新型コロナウイルスのワクチンは筋肉注射とされています。
筋肉注射だから痛いということはなく、注射の痛みは針の太さや注射をする人の技量によります。
皮下注射と筋肉注射の違い
皮下注射は皮下組織に注射するため皮膚と皮下組織をつまみ上げて皮膚に対して約45°の角度で注射します。
皮膚の下にある脂肪の層に注射するため、打った箇所にワクチンがしばらくとどまって吸収がゆっくりで、効果が長く続きます。
筋肉注射は筋肉まで針を届かせるため、皮膚に対して90°の角度で注射します。
筋肉にはたくさんの血管が通っているため、接種されたワクチンの吸収が速いため皮下注射より吸収が速くなります。皮下注射では痛みなどが強い薬の場合にも行われます。
筋肉には多くの神経も通っていますので、痛みを強く感じることもありますが、他の注射方法に比べ局所部位への痛みや腫れが少ない傾向にあるとも言われています。
筋肉注射の手技
筋肉注射も以前とは少し違う新しい手技のものがが登場しています。
腕に力が入らないよう、自然に腕をおろしたままにする。内旋しないように注意。
→神経損傷を避けるため。
三角筋をつまみ上げない。
→皮下注になる恐れがあるため。
接種部位:肩峰から降ろした垂線と前後の腋窝線の頂点(わきの下)を結ぶ線が交わる点。
→肩関節周囲炎や神経損傷を防ぐため。
90度に刺入する。針入れの深さは体形により13~20 mmが目安。
→針の長さは25 mm。
逆血確認は不要
→三角筋中央部に太い血管はないため。シリンジを陰圧にすることによリ筋肉組織が損傷し免疫獲得减弱をおこしてしまう。
接種スピードは速いほうがよい。刺入時に痛みやしびれがないか確認してから薬液を注入する。
接種後に接種部位はもまない。圧迫する程度。
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