暗闇に白い姿が浮かびあがる。
白い…白い服。
幽霊?
いや違う。
白衣?
男性かな?
丸い体型。お腹がポコっと飛び出してた。
《プシュープシュー》
顎に無精ひげが生えてる。
ぴっちり分けた七三の髪。
首から黒い聴診器を下げている。
白衣に聴診器?
って事は先生?
「…ん?」
その人は伏せていた頭を上げる。
私と目が合った。
驚いた顔でこちらを見つめる。
「目…開いた?」
目?
目がどうかしたのか?
顔を近付けてきた。
興奮した感じで話しかけてくる。
「わかりますか?小林さん?」
はい。
わかります。
どちら様ですか?
「初めまして。わたしはあなたの主治医の佐々岡です。」
そういって私に深く頭を下げた。
主治医?
…そうか。
声でしか会ったことのなかった先生。
想像していたより優しそうな先生だ。
何かイメージが全然違う。
声だけじゃ…音だけじゃわからない事がたくさんあるな。
先生、いつも愚痴ばかり言ってすいません。
…
あれ?
もしかして…
私、目が
目が見えてる?