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〃整形外科⑫〃




「オッス、お婆ちゃん。」


「ああ、来てくれたのかい?」



ひい孫さんが河田さんのお見舞いに来た。


河田さんの顔がほころぶ。



「これ、あげる。」



パッと何かを差し出した。

ひい孫さんから渡されたもの。



画用紙を丸めたもの。


河田さんが画用紙を広げて表情が変わった。


それはニコニコ笑ってる河田さんの似顔絵だった。

横には『お婆ちゃん、早く元気になってね♪』と大きな字で書かれていた。



「河田さん、ここに貼っておきましょうか?」


私は画用紙を頭元の壁に貼り付けた。




それから間もなくだった。



「優花ちゃん、見て見て」



そのうち平行棒で歩けるようになり



そして、歩行器を使って歩けるようになっていった。




「はやく元気にならなきゃねぇ。」

 



そして歩行器で歩けるようになった頃。


リハビリ室でお嫁さんと一緒に、河田さんを見守っていた。




「優花ちゃん。」


「はい?」



「…あのね、悩んだんだけどね、やっぱりお義母さんを家でみることにしたの。」



お嫁さんは笑顔でそう私に言った。



「…大丈夫なんですか?」


私は素直に笑顔になれず、心配で聞き返してしまった。


「あれからソーシャルワーカーさんと相談してね。」


話しによると無理はせずに、デイサービスやショートステイを利用することにしたんだって。



「主人もできるだけ手伝ってくれるって言ってくれたしね。」




河田さんを見るとニコニコして手を振っていた


「優花ちゃーん。」



私も河田さんに手を振りかえした。




「寝たきりになってたら、無理だったと思う。」


そのお嫁さんの言葉には重みがあった。



寝たきりでオシメも着替えも何もかもお世話が必要なのと


ある程度は自分の事ができるのでは負担がまったく違うものになる。


河田さんがリハビリを頑張ったから

いっぱい、いっぱい頑張ったから



良かったね。

 




河田さんが杖で歩けるようにまでなるまで、そんなに時間はかからなかった。


それに合わせて退院が決まった。



大腿骨骨折の術後の経過としては日数がかかった。


だけど、ひとまず目標にしていたゴール。





退院の日は学校だったので前日に挨拶に来た。



「力になれず迷惑ばかりかけて…」


私が未熟だったから

しかも実習終わってまで自己満足のために押し掛けて…


私が頭下げようとした時、河田さんが制止した。



「優花ちゃん、いろいろとありがとうね。」


そっと私の手を握ってくれた。

シワシワの手…
とても温かい手…




「きっと、いい看護師さんになれるよ。頑張ってね。応援してるからね。」



両手の拳をギュッと握ってガッツポーズをつくる。

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