【廃用症候群】
人間は使わない機能は維持できなくて衰えてく。
筋肉・関節、内臓、精神…いろんなものが悪くなっていってしまう…
だから寝たきりにならないように、早期離床といってなるべく早くからベッドから離れれるようにリハビリを頑張る。
寝たきりになると介護の負担はとても大きくなっちゃうから積極的に動かしてくんだ。
事件が起きたのは、河田さんがリハビリを始めて間もない時だった。
最初は河田さんも頑張ってたんだよ。
だけどね、リハビリを始めて2、3日した頃…
「足が痛いよ。」
リハビリのせいで筋肉痛が出てきた。
足を痛がってリハビリを嫌がるようになった。
「河田さん、頑張って!」
私が声をかけても…
「もう、いいよ。いっぱい頑張ったの…にこれ以上は無理だよ。」
河田さんはベッドから離れないようになった。
「ねえ、ちょっとティッシュ取ってくれよ。」
「あ…はい。」
どうしたら、いいんだろ。
「ねぇ、糸を抜いたところがピリピリするんだよ。」
「先生が1年ぐらいは皮膚感覚が残るって言ってましたよ。」
日にちが過ぎ、抜糸も済み、入浴も許可が出た。
でも、なかなかリハビリは進まなかった。
私は筋肉痛のところをマッサージしてみたり、湿布を貼ったり痛みが和らぐように頑張ってみた。
私は焦ってた。
どうしたらいいのかな…
「河田さん、一回だけトイレ座ってみませんか?」
ベッドの横には、看護師さんがポータブルトイレを準備してくれていた。
「…今はいいよ。後で。」
暗い表情で横向いたまま返事を返してきた。
「…。」
次にかける言葉に悩んでた時だった。
「ねえ優花、時間来たよ。挨拶して帰ろ。」
「あ、うん。」
同級生が呼びにきてくれたので病室を後にする。
「河田さん、また明日来ます。」
この日は結局リハビリできず実習時間が終わってしまった。