もぐもぐ…
ごくっ
「そう、上手ですよ。」
横で言語療法士さんが褒めてくれた。
喉を通過するとき、引っ掛かりそうで怖い。
飲み込むって、こんなに難しい事だと知らなかった。
「頭を後ろに傾くと、気管が広がるのでらなるべくアゴを胸につけるような感じで…」
その仕種をして見せてくれた。
真似して同じようにしてみた。
こうかな?
「あと一度にたくさん口に入れないで、一口で食べれるぐらいの量で…」
このくらいかな?
もぐもぐ…
もぐもぐ…
ごほっ!
「大丈夫ですか?」
ごほっごほっ…
苦しい…
だけど、鼻の管無いから食べやすくなった気がする。
これなら、食べれるようになるかもしれないぞ。
栄養ゼリーや栄養のジュースとかはいろいろな味があるんだ。
抹茶味
いちご味
チョコレート味
コーヒー味…
どれも結構甘い。
だけど我慢。
練習、練習。
食べれるようになるまで。
リハビリが終わるとご飯の時間。
「栄養を流しますね。」
はーい。
お願いしまーす。
来月には誕生日。
誕生日にはケーキ食べれるかな?
いや、ケーキだけじゃない。
今までの分、たくさん取り戻してやるぞ。
まずは肉が食べたい…
あと、うどんにカレーライスに…
頑張るぞ!
誕生日にもらったプレゼント。
1着のジーパン。
私は普段着はジーパンしか履かない。
きっかけは大学2年の時。
貴志からの誕生日プレゼントがジーパンだった。
古着屋で買ってきたビンテージ物の高いズボン。
高価な物だったのでジーンズの履きかたは貴志が教えてくれた。
それまでは、洋服やお洒落に無頓着だった私がジーンズにはまってしまう。
最初の洗濯
色落ちのさせかた
ヒゲづくり
24時間ジーンズをはきっぱなしで
洗濯は手荒い、陰干し
手間をかける程に味のあるものになる。
破れてもはき続けた。
親や陽子からは汚いって不評だったけど…
時間が経過する毎に宝物になるジーンズ。
何年か経ってジーンズは色あせるどころか、より良い物へと変わる。
友達も同じなのかもしれない。
時間が経ち、信頼が加わり、友達は親友へと変わっていった。
私にとって大切なモノ。
今になって友達の大きさを実感している。
貴志…
会って話しがしたいな…
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