4月26日木曜日(曇り)
『小林さん、お誕生日おめでとうございます。』
あ、どうも。
ありがとうございます。
看護師さん、気付いてくれてたんだ…
カルテ見ればわかるもんな…
《プシュープシュープシュープシュー》
ああ、そうだな。
ハッピーバースデートューユー♪
ハッピーバースデーディア裕♪
え~…小林裕さん、35歳の誕生日ですが感想は?
…老けたなぁ。
二十歳を過ぎると時間が過ぎるのが加速する。
おじさんと呼んでた年齢に自分がなっている。
…年々増えていくケーキのろうそく。
小さい頃はそれが嬉しかったよ。
早く大人になりたかったから。
好きな事沢山できると思ってたんだ。
現実は大人になって誕生日がきて喜んだ記憶があまりない…
嬉しかったのは20歳までだった。
誕生日なんて、ただ何処にでもある、ありふれた1日でしなかない。
…おめでとう?
何がめでたいの?
年をとってまた一つ死に近づくだけなのに…
『早く元気になりますように…誕生日カードです。置いておきますね。』
《プシュー…》
プレゼント準備してくれてたんだ。
…
ありがとう…
期待してなかったから、なんか嬉しい。
少し元気出たよ。
ただ、見えないのが悲しいな。
プレゼント…
…そういえばプレゼントってリアクションに困ることある。
気持ちのこもったモノだから、もちろん捨てれるはずなく。
でも趣味に合わなかったり、使うタイミングがなかったり…
プレゼントを渡されたあとのこちらの様子を伺う目が苦手なんだ。
悟られないよう余計に、わざとらしい笑顔になったりする。
私はプレゼントが苦手。
あげるのも悩む
もらうのも悩む
こんなの私だけなんだろうか?
喜んでもらうのは好きなんだけどね。
家族からは…
綾は毎年似顔絵のプレゼントくれてる。
ただ…気のせいか笑顔だった顔が年々暗い顔になっていく似顔絵の中の私。
綾の目には今の私はどんなに写ってるのかな…
醜い姿になった父親の絵は描いてくれるのかな…
…
あははっ
思い出して、つい笑ってしまった。
陽子は変わっているんだ。
誕生日とかお祝いとか、なにかのプレゼントを買う。
すると、その日にプレゼントを渡してしまう。
何でもない日なのに。
早く渡したくて我慢できず何日も前にプレゼントを渡さずにいられないらしい。
誕生日プレゼントを誕生日じゃない日に渡すと意味ないと思うんだけどな。
あらためて4月26日。
小林裕さん、誕生日おめでとう…
私に来年も誕生日があるのかわからない。
アンハッピーバースデー、トゥ、小林裕。
生まれてきたとき、ひとりぼっちで
死ぬときも、ひとりぼっち…
神様。
もし頂けるなら、プレゼントは元気な身体が欲しいです…
歩いて
食べて
喋れて
笑える
そんな平凡な時間が
わたしは欲しい…