4月9日月曜日(晴れのち曇り)
痛っ!
右腕に突き抜けるような痛みが走った。
入院してから何度も味わった痛みだった。
だから目が開かなくても何をされてるのかわかる。
『あ…ちぇっ』
舌打ちが聞こえてきた。
『もー…』
また腕に痛みが走る。
つっ!
『あ~あ』
痛いよっ!!
何度も何度も無言で針を刺すな!
私だって生きてるんだ。
モノじゃないんだからな。
失敗は仕方ないよ。
けどさぁ、何か一言ぐらいはあるだろ…
注射は何回もしても慣れないだから。
痛いものは痛い!
もともと血管が出にくいから、いつも腕は注射の後だらけになったなぁ…
青くなったり、腫れたりしてさ…
…優花ちゃんは何度も謝ってたっけ。
こちらが申し訳なくなるぐらいに。
意識なく眠ってる私にいつも声をかけてくれた。
心に響いてたよ。
人として接してくれてたんだ。
…
…
《ガタガタガタ…》
聞き慣れた音だ。
機械が部屋に入ってきた。
『ヨイショ』
身体を持ち上げられ背中の下に固い板を敷かれた。
『はい、下がって。撮ります。』
《ピー》
『終わりでーす。』
《ガタガタガタ…》
ポータブルのレントゲン。
入院中、何度もお世話になっている。
採血にレントゲンか、
今日は検査の日なんだね。
《ガタガタガタ》
また何かが入ってきた。
体に冷たいヌルヌルしたものをつけられ、棒をあてられた。
その棒が右へ左へ動かされる。
…この検査も入院してから何度となくしたからわかるよ。
エコー検査だ。
『ん~ー…こっちは…』
!!
耳に入ってきたのは佐々岡先生の声だった。
居たんだ。
捨てられたんじゃなかったんだ…
『ふぅ…』
見えないけど姿が想像できた。
いつも検査の時にも難しい顔をするんだ。
表情やため息で私はすごくドキドキさせられる。
また悪くなってないかという不安。
もしかしたら治ったんじゃないかという期待。
大きな不安と、ちっぽけな希望が混じり合う。
先生。
良くなるならどんな手術でも、どんな苦痛でも我慢します。
お金かかっても一生かかってでも必ず払います。
だから、助けてください…
どうか、助けてください…
また、家族と歩きたいんです。
また、綾としゃべりたいんです。
また、陽子の手料理を食べたいんです。
ただ、心の底から笑いたいだけなんです…
みんなと同じ体がほしいんです…
お願いします…