《シュー…カタン》
ふぅ。
スッキリした。
「あなた、どう?痛くなかった?」
また、痰が貯まって胸が痛かった。
だけど、陽子がいる時はもう看護師さんを待たなくてもいいんだ。
陽子に吸引してもらえる。
[ありが、とう]
最初のうちは看護師さんに教えてもらいながら、恐る恐るの吸引だった。
それでも、私が楽になるようにと、一生懸命に練習してくれただ。
「いえ、いえ。」
汗びっしょりになった私の体を拭きながら、笑顔をみせてくれた。
…家事も育児も一人で大変なのにに、文句一つ言わず私を支えてくれている。
愚痴の一つぐらい言いたいだろうに。
私の病気が陽子に沢山の負担を与えてしまった。
もし私が陽子の立場になったら、同じようにできる自信がない…
優しい表情で見守ってくれている。
だけど、疲れた顔。
きっと身体もクタクタに疲れてるんだような。
ゴメンな。
本当にゴメン。
《ゴォーゴォー…》
!?
何?この音。
すごい近くから聞こえてくる。
目を開けると陽子が目を真ん丸にして私の顔を覗きこんでいた。
《ゴォーゴォー…》
陽子、どうした?
何かあったのか?
「あなた、寝てるの?」
不思議そうに陽子が首を傾げる。
[おき、てるよ]
いったい何を言ってるんだろ?
《ゴォーゴォー…》
「だって起きてるのに、イビキかいてるみたいだから…』
え?この音、私からだったのか?
《ゴォーゴォー…》
何かまた病気?
少し息はしんどいけど。
大変だ、どうしよう…
「私が何かしちゃったのかな?」
陽子が不安そうな顔している。
「変な音がするんです。大丈夫でしょうか?」
陽子が慌てて看護師さんを呼んでくれた。
看護師さんが私の頭へ耳を近づけ確認する。
《ゴォーゴォー》
やっぱり変な音が鳴る…
この音は何なんだ?
看護師さんが顔をあげて微笑んだ。
「カフもれしてますね。大丈夫ですよ。」
カフもれ?
何?
看護師さんは手に注射器を持った。
「喉の管は袋を膨らませて固定してるんです。」
紐で固定してるだけじゃないんだ。
「風船から少しづつ空気が漏れるとしぼんで、隙間から音がなるんです。」
へぇー。
空気が漏れてた音なんだ。
看護師さんが管につながってるチューブと注射器を接続した。
「今から空気を少し入れますね。」
あ、音が止まった。
「そういえば、そろそろ管を交換しないといけないですね。明日変えましょうか。」
え?交換するの?
痛い?
危険じゃない?
うぅ、不安だ。