第1話『正義と悪』④
「お食事を配ります。」
をぉ!
待ってました♪
…って、あんパン一個に牛乳一本…これだけ???
まあ美味しいけど。
もぐもぐ…
腹ごしらえしてビニール袋を開けてみる。
ん?
これ全身タイツじゃん?
覆面付きの全身黒タイツ…
はは…
おいおい何かの罰ゲームかよ?
自然と顔がひきつり声を出して苦笑してしまう。
「さっきからキョロキョロして、君もしかして初めてなの?」
後ろの席から声かけられる。着替えが済んでるため体型しかわからないが中年太りって感じの人。
口がちょっと臭いゾ。
「大丈夫、簡単な仕事だよ。騒ぐだけ騒いで引き上げればいいんだ。」
「はあ…」
先程から頭の中が?で溢れている。
《キキーッ!!》
話をしているうちにバスが止まった。
「着いたよ。行こう!」
いったい何が始まるんだよ…
黒タイツの集団がバスから一斉に飛び出した。
小さいのから細いのからゴツイのからイロイロ。
端からみると変な宗教軍団だよな…
「イーッ!!」
揃わずバラバラの発声。
気が付くと先頭に蛙の着ぐるみ着た人がいる。
なんだこれ??
「おい悪者ども!そこまでだ!!」
戸惑っているとビルの上から声が聞こえてきた。
人影が飛び降りてくる。
…って、ビルの屋上から??死ぬぞ!?
思わず目を閉じてしまった。
だけど人影は何事もなかったかのように着地する。
目を凝らして見ると
黄色いマント
稲妻マークのシャツ
黒の長靴
ゴム手袋
「デンゲキマン、参上っ!」
で…デンゲキマン?
デンゲキマンは両腕を組み体を斜めにポーズをとる。
…
目の前の信じれない光景に思わず見取れてしまった。
…かっこいい♪
やっぱりヒーローは登場の仕方が大切だよな。
ん?
これって本物?
…何?
そういえばこの黒のタイツ…
闇組織ラタサナの戦闘服だよな。
周りを見回すと一斉にみんながバック転、側転を始める。
何?
もしかして何かの撮影?コマーシャル?
なるほど!
エキストラって奴なのか♪
バック転なら日頃の練習で欠かした事はない。
ヒーローにアクションは大切だからね♪
僕は張り切って回り始めた。
カメラは何処かな?