第1話『正義と悪』②
え?
いやいや、僕は別にミーハーというわけじゃないよ。
理由がきちんとあるんだ。
あれは小学生の時。
…だったと思う。
学校の帰り道だったんだ。
川に猫が流されてた。
段ボールに入れられた子猫、今にもひっくり返りそうだった。
気が付くと身体が先に動いてた。実はカナヅチだったのに…
案の定、僕も一緒に溺れて大騒ぎになった。
その時現れたヒーロー、それがガイズスターだったんだ。
目を開けるとガイズスターの腕の中、僕は白いマフラーに包まれてた。
怒られるかと思ってビクビクしていた僕の頭をやさしく撫でてくれた。
温かく大きな掌。
「偉いぞ!」
そう声をかけてくれると次の現場に向かっていった。
その日から僕はヒーローを目指すようになった。
その時に僕にくれた白いマフラー。
色褪せた今でも僕の大切な大切な大切な宝物。
パリ…ポリ…
ご飯代わりの大好きなヒーローチップを食べながらアルバイト雑誌をめくる。
不況だからなかなか仕事がない。
お金もない。
ずっとポテトチップス以外まともに食べてないなぁ。
だいたい専門学校の受験料だけでも、かなり高いのがダメージが大きい。
僕は小さい頃からヒーローになるための訓練は欠かしてない。
決めゼリフ。
決めポーズ。
ファンに書くためのサイン。
毎日、一生懸命訓練している。
こんなに努力しているのになぁ…
ぐぅううぅう…
やっぱ、ポテトチップスぢゃ駄目だ。
お腹すいた。
肉…肉食べたい。
『募集!誰にでもできる簡単な仕事です。日払い可。皆仲良しな楽しい職場です。昼食付き、交通費支給。しかもヒーローに会えるかも♪』
をぉ!!
メシ付き!
しかもヒーローに会える!
すっげー!
こんな夢みたいなバイトあったんだ♪
電話、電話。
メシ、メシ。
「もしもし?雑誌の募集見たんですけど」
…ご飯欲しさに飛びついたこの電話が悲劇の始まりだった。
『駅前に10時に来てください。』
「はぁーい♪」