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〃脳外科②〃



「いえ、大丈夫です。」


私は慌てて首を左右に振った。

男性は一生懸命、手袋を除けようと口で噛んでいた。


リストバンドに患者様の名前は水木と表示されてる。


そういえば病室の前の名札は外されてたなぁ。

おそらく家族の方の希望なんだろうね…



水木さんの仕草を女性は悲しそうに見ていた…



「この人、優しい人だったのよ。短気なところはあったけどね。」



「え?」



女性は私の方へ向いて、笑ってみせた。

女性が水木さんの手をそっと握ろうとしたが、水木さんがその手を叩く。
女性は怒ることはなく、悲しそうに微笑んだ。



「交通事故で頭打って…今では私の事も、子供の事もわからないの。」



「そうなんですか…」



私は言葉が出てこなくて、ただ相づちをうつしかできなかった。




水木さんは視線を合わす事なく、必死に足掻いてた。




「あ。」



隣のベッドの患者様が、こちらを見ていた。


白髪の目立つ、ほっそりしたお爺さん。



「こんにちは。」



私は頭を下げた。






あれ?無視された。



言葉には何も返してくれず、ただ私を見つめていた。




その時だった。



「学生さん、ナースステーションに戻って。」


「あ、はい。すいません、失礼しました。」


看護師さんに声をかけられ、私は患者様に頭を下げ病室を後にする。


急いでバケツを片付けナースステーションに戻った。


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