あ。
そういえば実施中、気になることがあったんだ。
「あのね、変だよね?」
「何が?」
飲み物のバリエーションが無くなったのか、真希はオレンジとブドウをミックスさせたジュースを口に運んだ。
色がすごいものになっている。
「優花はいつも主語がないから解らないよ。」
真希が苦笑いをする。
食事は終わって、お皿は片付けられていたがドリンクバーで私たちは粘ってた。
「病棟の看護婦さんのこと。患者さんの手術後は優しかったのに、だんだん冷たくなってね…」
真希は氷をガリガリ噛みながら、私の話しに耳を傾けてくれていた。
「例えば患者さんが、ご飯食べれないから食べさして…って言っても『自分で食べてください。』って…」
私の言葉に真希がキョトンとしていた。
「あぁ、仕事が忙しかったのかもしれ…」
「あのね、優花。」
真希が私の鼻をツンとつついた。
「何でもしてあげるのが優しさじゃないよ。」
「え?」
「患者さんは病気になると弱気になって、甘えたい気持ちが出たりする人もいるんだよね。」
ストローで氷をかき混ぜながら真希が話す。
横で加奈はストローをくわえてブクブクとジュースを泡立てていた。
「ナースコール一つで看護婦さんが来てくれる。身の回りのことしてくれる。」
真希は加奈を見ながらクスリと笑った。
「だから、何もできないんじゃなくて…何もしてないこともあるんだよ。」
?
何もしてない?
「こっちが何でもしてあげるのは簡単だし、その方が早いけど、それは優しさじゃない。」
「なんで?」
思わず私は聞き返した。
だって、してあげる事が優しさじゃないって?
「自分で何かをしようとすることが自然とリハビリになってるんだよ。甘えてしまったら何もできなくなるよ。」
…私は河田さんに言われた事は何でもしてた。
手に届くものさえ、言われたら取ってあげてた。
何でもする事が正しいわけじゃなくて、嫌われても何もしない事も看護…
気づかなかった。
看護婦さんの行動の意味。
自分でしてくださいっていう言葉の意味。
患者様のこと考えてるからこそ…嫌われても冷たい態度になる事もあるんだ。