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〃整形外科④〃


翌日、実習の日。



「おはようございます。」

「あら、おはよう。優花ちゃん。」


河田さんは、表情も柔らかく元の優しいおばあちゃんに戻っていた。



「昨日のこと、何も覚えてないのよ。ねぇ。」


苦笑いしたお嫁さんの顔は疲れていた。

一晩中、付き添って見ていたんだ…




「お昼の間、私が居ますから休んでください。」


お嫁さんの方が病人のようで、心配でたまらず声をかけてしまった。


「ありがとうね。でも大丈夫よ。」


「…そうですか。無理しないでくださいね。」




学生の立場で、それ以上は何も言うことができなかった。



よしっ!


とにかく、私にできることをしよう!

 

 




「へぇー、それからどうなったんですか?」



「それがねぇ…」


時間を見つけては、ベッドの側に行きお話をするようにした。


だって、それが昼寝を防いで会話することで少しでも精神活動になるんだ。



「気持ちいいですか?」


爪を切らしてもらったり、足浴もさしてもらったり


私は会話だけでなく、ケアを通じて河田さんとの関係を築いていった。



その甲斐あってか、私が顔みせると



「もう、優花ちゃん。待ってたんだよ。」


「すいません。昨日はテストだったんですよぉ。」


ニコニコして喜んでくれるようになったんだ。



「ちょっと、あれ取ってよ。」

「はーい。」


気軽に頼ってくれるまでになっていた。

 





「優花ちゃんは、いい子ねぇ。うちの息子の嫁に来ない?」


お嫁さんが笑いながら話しかけてきた。

いつの間にか、お嫁さんとも自然に仲良くなってた。



「いい年してるのに結婚しなくてねぇ…ほら、これが写真なんだけど…」


そういうと、カバンから携帯電話を取りだして私に見せようとしてくる。


「あ、その…そうだ。河田さん、早く家に帰れるといいですね。」


話しを反らそうと慌てて退院の言葉を口にした時だった。


「…。」


お嫁さんの表情が急に暗くなったんだ。




「ええ、そうね…」



何でかな?
気まずい雰囲気になっちゃって、私は言葉を出せなくなったんだ。




「あら、どうかしたの?」


河田さんだけは、いつもと変わらない。

私達の顔を見てニコニコしてた。



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