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✛1.救急✛

✛救急✛

 

…ピー…ー…

 

…ポー

 

…ピーポーピーポー

[右に曲がります]

 

 

ピーポーピーポー…

 

ピーポーピーポー…

 

…また、着ちゃったか。

毎日のように鳴り響いてる、聞き飽きた音色。
パブロフの犬じゃないんだけど体が自然に身構えてしまう。

 

 

「あ~あ、今日はクリスマスなのになぁ…」

 

 

不謹慎な事はわかってるんだけど…つい愚痴がでちゃったりする。
ジングルベルの代わりに鳴り響くサイレンの音…
私にはお似合いなんだよね。

 

 

ここは救急病院なんだから仕方ないんだ。
24時間いつ患者様が運ばれるかわからないんだからさ。

 

 

なんとなく病院を見上げたらと窓から他の患者さんが覗き込んでた。
何か騒がしい事には興味津々。
ワイドショーがいつまでも無くならないわけだよね。

 

…って他人の事、言えないんだけどさ

私はまだ看護師一年生の新人ナースだったりする。

 

 

まだまだ分からない事、戸惑う事の方が多くって
もちろん先輩ナースにもドクターにも頭が上がらないんだ。患者さんにもよくツッコミを入れられたりする。
毎日、毎日、頭を下げてる。
最近は声かけられるだけで条件反射で謝ってしまうくらいで。

 

 

「ふぅ…」

 

 

病院の中に入って来た救急車のサイレンが聞こえなくなった。

静かになって、ゆっくり時間が流れる。

…苦いものが私の口の中に広がった

だけど嫌いな味じゃない。

白い雪が降る代わりに白い息と煙が混じり合って立ち昇る。

ボーッとそれを眺めてた。

 

 

病院の敷地内は禁煙だからタバコの吸えるところは外の敷地にあるんだ。

寒い思いをしながらそれでも止めれなくて。

これでよく患者さんにタバコや酒を止めろなんて言えたもんだよね…

 

 

だけどさ、手術の翌日で痛いの我慢してる患者さんや肺炎で息しんどいはずなのに無理して吸っている患者さんをみかけたりするんだよ。
やっぱりこれも一つの病気なんじゃないかと思う。

 

 

おいしいとは思えないんだけど止めれなかったりする。

看護師の喫煙率は以外に高いんだよね。

ダイエットのためと言っている人もいるんだけど私はストレスから。

 

 

ともだちに薦められて、なんとなく吸いはじめたのが止めれなくなっていた。
看護師ってばイベント関係に縁がないもんだし
日曜日や祭日もあまり関係ない。

 

世間は休みでも病気まで休んでくれるわけもなく…

だから普通の人ともなかなか休みが合わなくって遊ぶ機会なんかも少かったりする。

ともだちに遊びに誘われても仕事ばっかで。

 

 

3交代で日勤で朝から夕方まで働いて終わっても数時間もしちゃうと夜には夜勤で再び出勤。

夕方から始まる勤務だと夜中過ぎまで働くと、お昼まで寝たらさ、お休みはほとんど終わっちゃう。

 

 

しかもだよ
時々、夜中とかに病院から出たとこを待ち伏せして声かけてくる人がいて、とても怖かったりするんだよ。

そんな繰り返しだからストレスも発散ができなくって。

何より不規則な生活なんだから眠りたくっても眠れない。私は、不眠症になっちゃってた。

何で看護婦になりたかったのかなぁ…

 

 

ロッカーの中に辞表を入れてるんだけど、出すタイミングをつかめなくって時間にただ流されていた。

忙しい業務に追われ必死に仕事をこなすのに精一杯。

 

 

 

この病院は救急病院ってだけじゃなくって24時間、日曜・祭日、昼も夜も関係なく開いている。休みの日なんかも外来は賑やかだ。

平日の昼は仕事が忙しくってなかなか病院に来れない方が夜間や祭日を利用して受診に来てんのかもしれないね。

 

 

私は外来じゃなくって病棟での勤務なんだけど。

 

通常、祭日や夜勤なんかだと職員の数は少ない。
そのため、一人がたくさんの患者さんを担当する事になっちゃうんだ。
急変やナースコールが重なると全然手がまわらなくなる。
ちょっとしたパニック状態。患者さんの処置中でも他の患者さんからも呼ばれて、何とか駆け付けて、遅いと怒られちゃう。
仕方ないんだけど辛いよ。

 

 

そこにいつ来るかもわからない入院が入っちゃうとそっちの対応で仕事にならない。

 

外来があまりに忙しいと手伝いに呼ばれることさえあるんだよ…
身体がいくつあっても足りないよ

 

別に患者さんは迷惑をかけたくって具合が悪くなるわけじゃないんだけど…

だから本当はこんな事思ったらいけないのに…

だけど看護師といっても一人の人間なんだよ。

天使なんかじゃないもん…

辛いよ…

 

休憩時間が終わっちゃって、タバコの臭い消すため歯磨きして、重い足取りでナースステーションに向かった。

あぅ

やっぱり入院の準備をしてるよ。

ドタバタしてる先輩ナースを手伝おうと電子カルテを開いたとき私は固まっちゃったんだ。

 

 

青山春樹』

 

 

そこには私のお父さんの名前が表示されてた。

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