10゚07’
《ピーポーピーポー》
もう、救急車が来た。
ドクターと外来の看護師が入り口で待っていた。
緊張する。
大丈夫なんだろうか?
10゚08’
「道に倒れてるところ通報あり到着したときにはJCS100でした。」
救急車から患者様が降りてきた。
良かった、CPAではなかった様子だ。
《ガラガラガラ…》
「30代男性。持ち物から確認し家族には連絡しました。」
ストレッチャーを押しながら発見時の状態や搬送中のバイタルの報告を受ける。
唇や指先はチアノーゼを起こしていた。
処置室に入り胸にモニターを付ける。
HR122
呼吸回数42回
指先にパルスをはさむ。
SPO2が65%
「酸素10㍑に上げてっ!。ルートはとれたかっ?」
聴診器で肺の音を聞きながらドクターが叫んだ。
10゚10’
身体が冷たい…
雨に濡れていたって言ってたけど…
血管が出にくい。
駆血帯を閉め直す。
患者様の眉間に皺が入る。
「挿管と呼吸器準備して。バルンは入ったか?」
早口で大きな声が処置室を飛び交う。
「はい、血液ガス。」
「ガーゼ取って!」
ドクターが三人程集まり、看護師が指示に合わせて動く。
ピリピリした空気。
1分1秒たりとも無駄にできず動く。
「入れます。」
身体を水平にし、頭を後駆屈させる。
「手足抑えて。」
ドクターの動作に何も言われなくても、看護師が素早く喉頭鏡を手渡した。
グッと口の中に押し込む。
その刺激に男性の手足が強く反応する。
10゚12’
ドクターが男性の口の中を覗きながら、手を差し出した。
スッと挿管チューブが手渡される。
「スタイレット取って、早く!!」
素早く挿管し、スタイレットを抜く。
バイドブロックを挟み固定する。
空気でカフを膨らまし、ドクターが聴診器で左右の胸の音を確認。
「OK!」
そのままテープでチューブで固定。
その先にアンビューを取り付けた。
ゆっくりバッグを押す。
10゚15’
《ゴロゴロ…》
チューブの中で痰が詰まっている音。
吸引し痰を取り除く。
皆の視線はモニターに集まっていた。
ごくっ…
息をのむ。
80
81
82…
ゆっくりSPO2が上昇をはじめた。
「ふぅ…」
ここでようやく一息ついた。