二月三日（土）
一睡もできなかった…
この人は誰なの？
私の目の前で横になってるこの人は…
何が起きたのか十分に理解できないよ。
いや受け入れたくないだけなのかな。
《ピーピー》
機械のアラームがなる度ドキッとする。
慌ててナースコールを押してしまう。
「大丈夫ですよ」
何が大丈夫なの？
看護師さんの言葉に心の中で反論してしまう。
体中管だらけで
機械がないと生きていられない…
こんな状態で何が大丈夫なのよ！
真っ赤になって腫れた目から飽きる事なく流れる涙…
人の出入りも多く全然気が休まらない。
一息つこうとしたら、また違う人が来る。
「ねえ、あなた…」
声をかけても目をつぶったまま。
私の声に答えてくれない…
いつもみたいに憎まれ口を言ってよ。
手をギュッとつねった。
つねった所は赤くなるのにピクリともしない…
気がつくとまた涙が溢れてくる。
主治医と名乗った先生から状態の説明があったけど難しくてよくわからないよ。
元気になるのかならないのか
それだけでいいから…
いや、何でもいい
元気にしてください…
刺激的な事もいらない。
お金もマイホームもいらない。
主人を返してください…
ねえ、あなた
今日は節分なのよ。
大好きな綾が楽しみにしてたじゃない。
お面と豆買って準備してさ
去年は私が鬼をしたから今年はあなたの番なのよ。
鬼役がイヤだからって寝たフリしても誤魔化されないからね！
ねぇ、
早く起きてよ。
２月３日
…今日は節分
鬼は内、福は外。
病院の窓から見える外の風景。
家族連れの姿が胸をしめつけた…
ちょっと前までは私もそっちの風景にいたのに。