〆日常の終わり〆/二月二日(金)
「ゴホッ、ゴホッ…」
ん~…
主人はまだ風邪が治ってない。
食欲もないし風邪薬だけ口に押し込んで家を出ようとする。
「お弁当は?」
返事なんて返ってこない。
朝、早起きして作るお弁当も作り甲斐がないのよね…
作るのが当たり前のように思われてるんだ。
最後に美味しいって言ってくれたのはいつだっけ。
「ママ、行ってきまぁーす」
「綾、行ってらっしゃい。」
娘の頭を撫でて幼稚園を後にする。
家に帰るといつもの掃除。
あっ
…また着替えた服をそのままにしてるよ。
何回言っても直してくれないし。
洗濯機にクシャクシャのシャツと靴下を入れてスイッチを押した。
はぁ…
最近ため息が増えたなぁ。
毎日毎日、同じ事の繰り返しだし。
何もない毎日。
朝起きて、お弁当つくってご飯つくって、主人と娘を見送り、朝から掃除に洗濯して、今晩のおかずに悩みチラシ見て買い物に出かる。近所付き合いもして、子供を寝かしつけて…
なんかオシャレなんてずっとしてないな…
たまに主人に何食べたい?って聞いても返事はない。
だけど作ったおかずに文句は言う。
子供の事頼めば仕事してるから疲れてるとか言ってゴロゴロして、
帰りが遅くなれば付き合いなんだとか逆に怒って…
…はぁ
なんなのよ…
何かこの退屈な日常を変えてくれるような事ないのかなぁ…
テレビのスイッチを入れる。
ワイドショーで芸能人の事や事件の犯人の過去とか、くだらない事を真剣な顔して語ってた。
テレビ点けたまま、洗濯機から洗濯物を取り出してたときだった。
電話のベルが鳴った。
…こんなはずじゃなかったのに。
きっと、くだらない事考えてたからバチがあたったんだね。
その電話で私の日常は地獄へと変わる。
神様、私が何をしたの?
「お釣りはいいです」
《バタン》
タクシーから飛び降り走った。
行き先は病院。
受付で病室を聞く。
「2階の病室になります。」
エレベーターを待ってられなくて慌てて階段を駆け上がった。
はぁ、はぁ
はぁっ
苦しい
息がきれる
慌ててスリッパで来ちゃったため足がもつれる。
何?夢?イタズラ?
電話では主人が救急車で病院に運ばれたって言ってたけど。
わけわからない。
きっと大丈夫だよね。
主人のことだからきっと大した事ないのに救急隊員に大げさに言っただけなんだろう。
はぁ、はぁ
ふぅ
気を静めるため自分にそう言い聞かせながら病室にたどり着いた。
息を整える。
目に入ってきた文字は
面会謝絶…
何これ?
何のイタズラ?
胸が張り裂けそうになる。
ゆっくり足を踏み出すと…
病室の中に主人はいた。
たくさんの管、機械に囲まれてベッドに横になっていた。