健康保険鳴門病院誤投薬事故
概要
平成 20年10月25 日
70代の男性が38.9度の熱と左胸部痛を訴え時間外に受診。
同日入院となり、肺炎・胸膜炎の診断で抗生剤を投与。
その後症状は軽減し、外泊もできるような状態に改善しました。
血液検査にて貧血の進行がみられ、11 月17日に鉄剤の投与し、その夜に39.4度の発熱がみられました。
午後9時ごろ、報告を受けて宿直医は患者さんがアスピリン喘息で通常の解熱鎮痛剤では重症発作を起こすことから、解熱のため“副腎皮質ホルモン”の「サクシゾン」を処方しようと電子カルテで“サクシ”を入力し、画面に表示された“筋弛緩剤”「サクシン」を誤って処方した。
薬剤払い出しの時に、薬剤師は投与量が少なかったとし不自然に思わず用意した。
看護師が不安に感じ、本当にサクシンで良いですかと医師に確認する。医師は頭の中にサクシゾンンと思い込んでおり20分ほどでの投与を指示した。
そのため、こういった使い方もあるのかと納得した。
投与後、1時間後には何事もなく寝ていた。
午後11時45分ごろ巡視時に看護師が心肺停止に気付き心臓マッサージ等の処置を行ったが、蘇生に至らず死亡となった。
死因は急性薬物中毒による呼吸不全と診断された。
筋弛緩薬による呼吸抑制が起きたのでしょうね…
原因
同病院は二つの薬剤を取り違えないように、約7年前からサクシゾンは置いていなかったが、この女性医師は昨年4月に着任し事情を知らなかったという。
今回の事故は宿直医師、薬剤師、看護師3人が関係し、投与前に誤りを正す機会が何度もあった。
医師の疲労状態 4月から11月までで病院にいなかった日は4日のみ。時間外の業務も多かった。
薬の処方のシステム 処方時、電子カルテで危険薬剤使用にたいする確認表示などされなかった。
医師の処方時の確認不足、臨時処方時の伝達方法 臨時処方における復唱確認などのシステム
薬剤師の払い出し時の確認 薬剤処方について用途など確認しなかった。
看護師の薬剤への知識不足 こういった使用方法もあるんだと処理した。
スタッフ間のコミュニケーション不足 聞こえるように会話したりしたが、最終的には遠慮して医師にはっきりと確認できなかった。
新規職員の薬剤に関する情報不足 サクシゾンンを取り扱ってないことを医師はしらなかった。
まさにスイスチーズモデルがあてはまる事故です。
何重もの防ぐ機会を全部通過し事故に至りました。どこかで止める事ができれば…という内容です。
サクシン
麻酔時の筋弛緩、気管内挿管時・骨折脱臼の整復時・喉頭痙攣の筋弛緩、精神神経科における電撃療法の際の筋弛緩
この事件の以前より現場では間違いが起こっており、アステラスのサクシンは医療過誤防止のためにスキサメトニウムへ名称変更に至りました。
定着していた薬の名称を変えるのは企業として大きな決断だったのでしょう。
それでも患者を護るために安全対策の1番効果のあるやめるという選択肢を選びました。
しかし間違えやすそうな名称の薬は他にもあります。
決して他人ごとではない医療事故。
確認を怠らず、コミュニケーションエラーを防ぐ体制をつくりましょう。
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