4月8日日曜日(曇り時々雨)
あれ?
手が握れない。
上手く動かせない。
おかしい。
意識しっかりしている時はもう少し動かせたはずなのに…
よいしょ。
何とか瞼を少し開けて視界に入ってきたもの…
え…?
何だ、これ…
私の…手…なのか?
グローブみたいに膨れあがった掌。
他人の人の手みたい…
いや、お化けみたいな手だな…
こんなに腕も腫れてしまって…それでなかなか採血できなかったんだな…
さらに注射の後で、あちこち青く内出血した皮膚。
手首は赤く腫れて動かすと痛みがはしる。
いったい、なんなんだよ…
この醜い物体は…
気持ち悪い。
もしかして、手だけじゃなくて
顔なんかもパンパンになっているのかもしれない…
そっか。
みんな顔の変わった私を気づかなくて、お見舞いに来なくなったんだな。
…バカらしい
…そんな筈がない事をわかっていても考えてしまう。
自分をかばう為の言い訳を考えている。
今の私の姿。
醜くパンパンに腫れた身体にオムツとストッキングつけた中年の男。
しかも、喉と腹からは管が生えている。
想像しただけでも目を被いたくなる…
知り合いには死んでも見られたくない姿だ。
もしかしたら、化け物みたいな私を見てみんな逃げていったのかな…
《プシュープシュー》
想像ばかりで真実は解らないけど…
一つだけ確かな事がある。
こんな手では何も掴む事はできない…
触れる事はできても握る事はできない。
全部こぼれ落ちていく。
今の私の手は何も掴むことができない。
夢
幸せ
家族
友達
掴めない…
全て逃げていく…
飾りだけの掌。