第0話『ヒーロー』

第0話「ヒーロー」

「そこまでだ!世の中に悪の栄えた事はない!!」

 

響きわたる声。

左手を腰に右手は天に向かって突き上げた。

 

「成敗!!!」

 

反動をつけて勢いよく飛び降りてみせる。

 

 

ドンッ!

 

 

フフフ…
着地もビシツと決まった。格好イイ

 

 

ゆっくり顔を上げたその時だった。

 

 

 


ドンドンドンッ



アを強く叩く音。
ドアがミシミシいっている。
壊れる前に慌ててドアを開けると大家さんが立っていた。

目が血走り僕を睨みつけ胸ぐらを掴む。



「うるさい!何度言ったらわかるんだ。もう一度したら部屋を出て行ってもらうからな!!」


バタンッ


 

鼓膜が裂けそうな大きい声。
胸がドキドキいってるよ。


しまったなぁ…
また怒られちゃったよ。


ヒーローには決め台詞とポーズの練習は欠かせないんだけどなぁ。
ただ、場所が悪かったよな。



4畳1間の狭い部屋。
畳は擦り切れボロボロ、変な臭いもする。
壁も薄く隣のテレビの音も聞こえてくるし。
風呂なしトイレは共同。


まあ、築30年のアパートだから仕方ないけど…




憧れのヒーローになる練習に熱中しすぎてついつい大声を出してしまった。


とほほ…


どんなピンチになっても
最後に正義は必ず勝つ!




僕は子供の頃からヒーローに憧れてた。

テレビをつければニュースではヒーローが活躍していた。






そして、いつしかヒーローは職業として認められるようになっていた。


 

みんながヒーローに憧れた。
子供の将来なりたい職業1番はヒーロー。



ヒーローになるためにはヒーロー育成専門学校に通い三年間厳しい授業を受ける。
更に国家試験を受けて厳しい競争に勝ったものだけがヒーローとしてのスタートラインに立てるのだ。




ヒーローの証明として国よりマントとバッチと免許証が授けられる。
バッチに記された星の数がヒーローとしてのランクになる。



成績や品性が悪いと免許取り消しヒーロー失格になる。



ヒーローの数はだんだん増えて、自然と犯罪の数は激減した。




ヒーローは犯罪を求め、スーパーヒーローを目指し、より厳しく悪を裁いた。


結果どんどん犯罪は減りヒーローはより狭き門となる。




今の平和な社会を築いた伝説のスーパーヒーローがいる。


幾度となく世界のピンチを救ったヒーロー。



『ガイズスター』


真っ赤なマント
真っ白なマフラー
唯一の5つ星のバッチ
無敗のヒーロー



彼の名を知らない人は誰もいない。
今も語られる伝説の戦い。
悪の秘密基地に一人で突入し壊滅へと追い込んだ。




今、ヒーローのほとんどはヒーロー以外に仕事をしている。



サラリーマンだったり、スーパーの店員だったり警備員だったり内容も様々。




ヒーローで食べていけるのは三星以上。



三星以上になるとスポンサーがつくし、テレビや雑誌にも出れる。
講演会に呼ばれたり、歌を出したり大忙しだ。






僕は毎日、ポスターや雑誌を見ながらヒーローになれる日を夢見ていた。



いつの日かきっと…












(つづく)

 




『新番組予告!』




これは…
ヒーロー?



ヒーローを目指してたはずの僕の前にヒーローが立ちはだかる。


三ツ星ヒーロー。

飛んでくる拳、稲妻。





何で?


何でこんな事になったの?



いきなり絶体絶命のピンチ


『第1話 正義と悪』




お楽しみに!











ちくしょー…
覚えてろよ!

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